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意味怖(意味がわかると怖い話)

Lunablueさんによる意味怖(意味がわかると怖い話)にまつわる怖い話の投稿です

眠らない町の電話ボックス
短編 2025/07/05 14:14 404view

## 眠らない街の電話ボックス

あれは、俺が大学を卒業してすぐ、東京で一人暮らしを始めた頃の話だ。初めての一人暮らしで心細かったが、それ以上に期待と不安で胸がいっぱいだった。特に、夜の街を一人で歩くのが好きだった。煌々と輝くネオン、人々のざわめき、行き交う車の音。眠らない街は、俺を妙に安心させた。

ある晩、終電を逃してしまい、仕方なく歩いて帰ることにした。時間はもう深夜2時を過ぎていたと思う。いつもは人でごった返している駅前も、この時間になるとまばらで、ほとんど人影はなかった。

ポケットを探ると、スマホの充電が切れていることに気づいた。こんな時に限って。タクシーを呼ぶにも、誰かに連絡するにも、公衆電話を使うしかない。そう思い、辺りを見回すと、古びた電話ボックスがポツンと立っていた。こんな場所にもまだ残っていたのか、と少し感心した。

中に入ると、独特の埃っぽい匂いがした。受話器を取り、小銭を入れて、友人の番号をダイヤルする。しかし、何度かけても繋がらない。仕方なく諦めて受話器を置こうとしたその時、突然、プルルル……とけたたましい着信音が鳴り響いた。

こんな深夜に、この公衆電話に電話がかかってくるなんて、一体誰が?

恐る恐る受話器を取ると、微かに雑音が聞こえるだけで、声は聞こえない。だが、確かに誰かが受話器の向こうにいるような、そんな気がした。俺は「もしもし?」と何度か呼びかけたが、返事はない。

諦めて受話器を置こうとした瞬間、受話器の向こうから、女の声が聞こえた。

**「…あなた、なぜ、そんなところにいるの?」**

ゾッとした。俺は反射的に受話器を耳から離した。だが、女の声は、まるで電話ボックスの中にいるかのように、はっきりと聞こえた。

**「そこは、もう…」**

恐怖で受話器を床に叩きつけ、俺は電話ボックスを飛び出した。後ろも振り返らず、ただ一心に走った。どれくらい走っただろうか。息が切れ、足が棒のようになった頃、ようやく見慣れた景色が見えてきた。

息を整えながら、ふと、自分が通ってきた道の方を振り返った。さっきまでいたはずの電話ボックスは、どこにもない。いや、それどころか、あれほど賑やかだったはずの深夜の街が、まるでゴーストタウンのように、ただ静かに、そして真っ暗なまま、そこに広がっていた。

俺はあの電話ボックスにいたはずの**「眠らない街」**の光景を、そこで初めて目にしたのだった。

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コメント(1)
  • 5分後に意外な結末シリーズ(本ではないよ!)を投稿してみました!

    2025/07/05/14:17

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