30番 永尾ナミエ
担任はその名前を呼ばない。
でも、机の中には古い型のランドセルがあった。今では使われていない、昭和のもの。
そのランドセルには、爪でひっかいたような血の跡がついていた。
卒業式の日、私たちは集合写真を撮った。
写真を見たとき、誰もが息を呑んだ。
30番の席に、誰かが座っていたのだ。
顔は見えない。ただ、口元だけが、裂けるように笑っていた。
何人かが写真を焼こうとした。
だが、真ん中に焼け残ったのは、あの“笑顔”だった。
焼けば焼くほど、笑いが深く、濃く、広がっていった。
いじめは、誰かが“消える”ことで終わるものではない。
それは、場所に残る。空気に染みつく。
“記憶”という名のままならぬ亡霊として。
だから、気をつけてほしい。
あなたのクラスの出席番号──
30番は空欄ですか?
それとも、今この瞬間、名簿の下に“赤いインク”で何かが書き足されましたか?
机の中を、どうか見ないでください。
それは、まだ“そこ”にいるから。
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俺の出席番号29