消えた隣人

東京都内のあるアパートで、一人暮らしをしているBさん。普通のOLで、特に特筆すべきこともない日常を送っていた。

ある日、Bさんは帰宅すると、隣の部屋から異常に大きな音が聞こえてきた。ものを叩く音、何かを引きずる音、そして叫び声のようなものもかすかに聞こえる。その時、Bさんは「また隣の住人が酔っ払って騒いでるのかな」と思って、気にせずに自分の部屋に入った。

だが、夜が深くなるにつれて、音はますます大きくなり、どこか慌ただしい感じがする。Bさんは次第に不安を感じ、音を無視し続けることができなくなった。

「本当に何かが起きてるんじゃないか…？」

翌朝、隣の部屋は異常に静かだった。音が全くしない。Bさんは少し気になり、隣の部屋のドアをノックしたが、返事はなかった。仕方なく管理人に連絡し、隣の部屋の様子を見てもらうことにした。

管理人が部屋に入ると、部屋の中は荒れ果てていた。家具がひっくり返り、壁には無数の引っ掻いた跡が残っている。床に血痕が点々と落ちており、まるで何かがそこを引きずられたような跡もあった。

「誰か、住人がいるはずだ」と管理人は言ったが、部屋の中には誰もいない。Bさんは恐怖を感じつつも、そのまま帰宅することにした。

その日の夜、また隣の部屋から不気味な音が聞こえてきた。Bさんは最初、それを無視しようとしたが、次第に音が近づいてくるのを感じ、耐えられなくなった。

その音は、明らかに自分の部屋のすぐ隣から聞こえてくる。ドアを開けようとするその瞬間、Bさんは背後から冷たい手が肩に触れる感覚を覚えた。

振り向くと、そこには誰もいない。しかし、隣の部屋から出てきた女性の姿が、薄暗い廊下の奥に立っているのが見えた。その女性は、目を見開いてこちらを見つめている。顔は蒼白で、口元には微かな笑みを浮かべていた。

「あなたも見つけたんだね…」

その言葉が耳元でささやかれた瞬間、Bさんの体は硬直した。声の主が誰だかわからなかったが、その言葉が確実に自分に向けられていることがわかった。

その夜以降、Bさんの周りで異常な出来事が次々と起こり始める。夜中に寝ていると、誰かが自分の足元に立っている気配がする。そして、気づいた時には、目の前には血のようなものが滴り落ちていた。

ある日、Bさんは不安から逃れるために引っ越す決意をする。しかし、引っ越しを終えて新しい部屋に落ち着いた後、ふと古いアパートのことを思い出してしまった。

そして、その日、Bさんの携帯に一通のメッセージが届く。

「あなた、今度はどこに住んでいるの？見つけたよ。」

その瞬間、Bさんは背筋が凍りつくような感覚を覚えた。メッセージには住所や部屋番号は書かれていなかったが、今まで住んでいた場所のことが書かれていた。まるで、どこからか見張られているような感覚に襲われ、再びその不気味な女性の笑顔が頭に浮かぶ。

そして、Bさんは気づく。

「誰かが、この場所から逃げることを許さない。」

その後、Bさんは再び姿を消した。そのアパートには、彼女が住んでいた痕跡が今も残されている。