そう思って玄関を開けようとした俺を、ユウが止めた。
「お前の母さんさ……さっきから、2階の仏間にいるぞ」
言われて振り返った瞬間――
階段の上に、仏壇の前に座る“母さん”が、こっちを見ていた。
玄関のチャイムが、もう一度鳴った。
「ピンポーン」
インターホンを見ると、やっぱり母がいる。
けど顔が……違う。なんだか、真っ黒で、見えない。
「開けちゃダメだ」
ユウが震えながら言った。
でもその時、階段の上の“母さん”が、ゆっくり口を開いた。
「おるすばん、ちゃんとしててえらいね」
……その声は、さっきまで俺の隣にいた、ユウの声だった。
振り返ると、隣にいたはずのユウは、いなかった。
**
今、母は言う。
「その日、あなたの友達なんて家にいなかったって、警察の人が言ってたよ」
あの日、俺は本当に一人で“おるすばん”してたんだろうか。
じゃあ、“ユウ”は、誰だったんだ?
あの封筒は、翌朝には消えていた。
でも俺の部屋の窓には、今でも時々、ユウの声がする。
「なぁ、お前んちって……まだ幽霊出るんだろ?」
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