それにこんな状況で横にいる私に気づく様子がない、ただ目の前のご飯を夢中で食べている。取り憑かれたように。
この人達に助けてもらうどころか、気付かれないようにしなくては。そう思い、足音を立てないように慎重に通り過ぎた。希望は次に会うことになるであろうヘビに移っていた。
明かりはますます落ち、足元もはっきり見えなくなり怖いのにゆっくりと歩かなければいけないようになってきた。
遠目にヘビが見えた。暗いのに。
理由はその両目が存在することを証明するように光っていたからだ。
私は何もしてくれない仏像より、ヘビの方が頼りになる気がして勝手に神様だと思いこむことにした。
「神様、ここからだして。ここは私のいた世界じゃない。」
叶うはずがないと思う私にヘビは当然何もしてくれず、うんともすんとも言わなかった。
分かっていたことだが、悲しくなり涙が溢れた。
それでも進むしかないと思えたのは、さっきのお坊さん達より話を聞いてくれるヘビの方が勇気をくれたかもしれない。
食事所は相変わらず誰もおらず、暗かった。
それでも紫色のご飯を食べている人がいないだけマシか、と思えるようになったのは成長したのかなと感じた。
視界の端に、とても小さな炎が見えた。
篝火だ、私は走り出していた。
まるで私の心のように弱ってしまった炎がそこにあった。
薪をくべる人がいなくなり、もう消えかかっているようだった。
この後、私はお寺を出て歩いて家まで帰りました。
家に着くと、お母さんが来て「どこ行ってたの?もう少しで警察に相談するとこだったのよ。」と、怒っているような安心したような顔で私に言いました。
私は「ただいま。」とだけ返しました。
少し時間が経ってから、あのお寺ではそんな参拝をする行事がないことやヘビを祀ってはいないことを知りました。
とても不思議な出来事でしたが、結果的に無事に帰ってこれたのは神様が守ってくれたのではないかと思っています。
あの時、両親と一緒にお寺に歩いて行ったことははっきり覚えていますが、お母さんにもお父さんにもそれについて尋ねることはしませんでした。

























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