福岡県虐待殺人事件

これらの言葉は一見、よくある親の苦悩の吐露にも思える。
しかし、彼女の語る“理由”は、全て子どもに責任を押し付け、自らの行為を正当化するための言い訳に過ぎない。

母親は、幼い子どもが泣き叫び反抗したことを「悪い行動」として繰り返し非難した。
「どうしても言うことを聞かない」と嘆く彼女は、感情的に手を挙げることを躊躇しなかった。
「試しても無駄だった」と振り返るその言葉の裏には、子どもに寄り添う努力や他の方法を模索する意志は見られない。

また、助けを求めなかった理由については「助けを求めるのは甘え」「誰も助けてくれない」と自己完結し、孤立を選んだことが判明した。
彼女にとって、母親としての役割は孤独な闘いであり、その中で暴力を振るうことは正当な“躾”だったと主張する。

最も重く、胸を締め付けるのは、命を奪った事実に対する彼女の冷たい言葉だ。

「殺すつもりはなかった」
「偶然だった」

責任を回避し、過失を軽く扱うその姿勢は、被害者である幼い子どもの命の重さを全く理解していない。

さらに、「あの子が悪い」「普通の母親だった」と繰り返し語る彼女の言葉からは、自己の行為を正当化し続ける強固な心理が透けて見える。
この言葉は、加害者としての自覚の欠如を示し、心の闇の深さを感じさせる。

今回の事件は単なる「親の一時的な感情の爆発」ではない。
これは、自己中心的な責任回避と暴力を正当化する心理がもたらした、悲劇の結果だ。

虐待は、被害者が声を上げられず、孤立した家庭で静かに進行することが多い。

母親の言葉は、社会に対して警鐘を鳴らしているようでもあり、同時に我々の無力さを突きつけている。

親が「普通」であることを装い、責任を放棄する中で、無辜の子どもが犠牲になる現実を変えなければならない。

今回の取材を経て、私たちは再度問いたい。

親の言い訳はどこまで許されるべきか？
被害者の声なき叫びをどうすれば救えるのか？

命を守る責任は親だけでなく、地域社会、学校、そして我々一人ひとりにもある。

この痛ましい事件を風化させることなく、同じ悲劇が繰り返されぬよう、社会全体で見つめ直すべきだ。

犠牲となった子どもに、安らかな眠りが訪れることを願いながら。