つながり

後部座席からあまり良くない気配を感じるが
目で観ようと、ミラー越しに観ようと
何もなく
少し哀愁漂う車内のまま
いつもの様に、何処へ行くわけでもなく
ドライブをしていた。
一瞬の事だった
フロントガラスが街灯に照らされたその瞬間
フロントガラス一面が手形で覆われていた

後部座席からの気配
フロントガラスに照らされた手形
どちらも太郎は気付いていない様子だった。

私｢太郎、最近車で何かあった？｣
太郎｢え？何で？別に何にもないよ｣
私｢そっか｣
私は先程の件を太郎に伝えた

私｢だからさ、取り敢えず事故とか気をつけてね
太郎が良くてももらい事故とかも有るし｣
太郎｢もらい事故とかふせぎようないじゃん｣
太郎は笑いながらも最後に付け足して
太郎｢わかった、きをつけるよ｣

それから数日位だろうか
太郎の母、奥さんからの話だ
太郎がここ数日帰って来ない、携帯も繋がらず　

何か知らないかと
最後に会ったのはあの時が最後だった
ありのままを伝えて
大丈夫ですよ、そのうちひょっこり帰ってきますよと
気休めを言ったと思う。
結局太郎は行方知れずのままだ
あの日を境に２年程勤務した後
私は離職しその街からも去った。
何年か経ってたまたま駅のホームで
出張途中の元同僚と遭遇した
私は太郎の話を聞いた。
あの後も結局太郎は帰って来る事もなく
奥さんも次第に明るさを失い
引きこもる様になり退職したそうだ