知らないうちに読んでる
投稿者:左右 (12)
よく「障る話」というのがありますよね。
「この話を聞いた人の元へ○○がやってくる」とか「この話を読んだ人は○○になる」とか。ネットにある怪談では自己責任に分類されるタイプの話。
人々の体験談を集めて実話怪談本という呈にしている怪談作家さん達。縁あってその内のお一人から伺った話です。
実話怪談本が好きで読み漁ってる人間としては冗談じゃねえと思いました。
大抵インタビュー中ですね。体験した方から伺っていて「あ、これは駄目だ。本にしちゃ駄目だ」と思う話は少なくないですよ。実害もありましたし。調子に乗って深入りしたせいで洒落にならん目にあった事もあります。僕じゃなく家族にまで被害が及んだ事も。まあ僕みたいな変態怪談マニアからすれば貴重な実体験なんですけども(笑)
ただ、それはまだいい方なんですよ。
「こりゃヤバいぞ」と思ったらディティールを変えて似通っただけの別の話として載せればいい。最悪その話は封印しちゃってもいい。完全版を載せる・語るとヤバい話は一部を切り取ればセーフ。ルールを決めて、ここからは踏み込んじゃダメだぞと自己防衛できる。
タチが悪いのは「確実に障るのに、聞いた側の僕が障る事を忘れてる」話ですね。伺っている最中、校正中までは覚えているんです。
「この話は完全版を載せてはいけない」「この話は細部を変えて話して○○という単語を出してはいけない」「これは封印だ」と。
それが、急に忘れてしまう。書き手と読み手を守る為のルールを忘れてしまうんです。
障る話があったこと、この話は表に出さず封印しようと決めたこと、それ自体はきっちり覚えている。けれど「どれがその話か」分からない。脱稿して本が完成しても思い出せない。当時のメモを見たり録音を聴き直しても思い出せない。いや僕は何回もヤバい事になってますから、障る話には目印をつけてるんですよ。それもない。
多分、かなりの数が紛れ込んじゃってます。僕の本だけじゃなくて○○さんとか○○さんとかも似たような経験なさってるそうですから。
でもそういう話は「障りがある」と分かっていてこその話ですからね。知らずに読んだなら大丈夫だと思います。多分。
なんでしょうねえ。祟りたい、障りたい、みたいな欲求があるんでしょうかね。アッチの方々。僕ら怪談マニアを利用して伝染・拡大したいのかな。リ○グみたいに。
読んだ人には影響を及ぼさない、けれど大勢の人間に読まれる事で完成する呪い、というのも存在するかもしれません。
そういう「ヤバさ」も怪談の醍醐味ですよね。怖い思いがしたくて怪談話という不発弾に関わってる訳ですから。
不発弾だと思ってたものが時限爆弾だったりするのも怪談の楽しさですよ。
個人的に嫌な話を書いていると、ペンや消しゴムが無くなります。
小さな机なんで無くしょうがないのですが。仕方なく新しいペンを出すと、普通に原稿の上にペンが置いてあるんです。
怖いに投票しました☺