家族限定
投稿者:左右 (12)
友人と廃墟を探索している時の事だった。
そこは心霊スポットとして有名で、肝試し中のグループが怪奇現象に見舞われたり、動画配信者が訪れた際に不可解な影が映り込んだりと話題に事欠かない。
「ここさあ、強盗に一家皆殺しにされたって噂じゃん」
友人がそう言った直後、耳元で女の声がした。
ちがうよぉ
聞こえていないのか、友人は尚も喋り続けている。
「滅多刺しだったって」
今度は男の声がした。
ちがうよ くびつりぃ
男女と子供の声が揃ってこう言った。
いっかしんじゅう
弾んだ、とても楽しそうな声だった。
視界の隅で何かが揺れている。天井からぶら下がっている。
一家三人、仲睦まじく、死後もゆらゆら揺れている。そんな想像をして鳥肌が立った。
見上げる勇気はない。確かめたくない。
「なんも起こらんし」とボヤく友人を急かし、その日は帰宅した。
後日、友人は発作的な自殺を図り、失敗した。首吊りの後遺症が残り、歩く事さえままならない日々を送っている。
病室のベッドの上で、友人は涙ながらにこう言った。
「楽しそうなのにさ、俺だけ仲間に入れてくれないんだよ。俺だって一緒にぶら下がりたいのに、お前は家族じゃないから駄目だって」
「お前はまだ若いから、死んだりすんなって事だって。どう言えばいいか分からんけど、俺はお前が生きててくれて良かったよ。小学校からの付き合いじゃん」
「違うよ。見ろよ。楽しそうだろ」
いっかしんじゅう
弾んだ、とても楽しそうな声がした。あの日、あの廃墟で聞いた声だった。
いっかしんじゅう さとうけ!
「ほら、三人一緒にああやって、めちゃくちゃ楽しそうなのに俺だけ仲間入れないなんておかしいだろ。こんなんじゃ佐藤さん家にも行けないし。ほら、見ろって。めっちゃ楽しそうなのにさあ。なんで俺だけ駄目なんだよいいじゃん」
視界の隅で何かが揺れている。天井からぶら下がっている。
見上げたくない。確かめたくない。
いっかしんじゅう さとうけ!
たのしいでーす!
狂気を感じた
僕も混ぜて、さとうけに
いいなぁ