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妖怪・風習・伝奇

みとこんさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

シマナリ様
長編 2025/05/10 08:45 8,036view
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彼は、最後にこう呟いた。

「……もう、忘れないよ」

そして、静かに、沈んでいった。

その日、森の入口にて、警察が一人の男の靴と手帳を発見した。
手帳の最後のページには、震えるような字でこう記されていた。

「潮は鳴っている」
「ここは 海のかわり」

「シオナリ様が わたしを覚えていた」
「だから わたしも 思い出した」
「神は 孤独だった」
「だから しずんだ」

それ以降、森の中に入った者はない。
いや、入ったのかもしれないが――戻ってはこなかった。

海は今日も、何もなかったかのように、静かだった。
けれど耳を澄ませば――

どこかで、潮が鳴っている。

10/10
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