その中のひとりが、口を開いた。
「なんで、生きてんの?」
その言葉を聞いた瞬間、世界が崩れた。
——目を覚ますと、俺は墓地の石段の下に座り込んでいた。
母が心配そうに顔を覗き込んでいる。
「大丈夫?途中で倒れたみたいだったけど」
「あ、ああ……夢、見てた」
そう答えながら立ち上がろうとしたとき、視界の端に、誰かの姿が映った。
白装束の列。そのうちのひとりが、こっちを向いていた。
その顔は——俺だった。
目のない、黒い俺が、口を動かしていた。無音なのに、言葉ははっきり聞こえた。
「入れ替われば、帰れるんだよ」
気が遠くなった。
——帰りの車の中で、母がふと言った。
「そういえば、おじいちゃんが亡くなる前に言ってたの。“あの子はまだ戻れない”って」
「……誰が?」
「さあ?わからない。ただ、あの子って、ずっとあなたのこと呼んでたのよ」
俺は窓の外を見た。
風景は変わらない。でも、ふとした瞬間に、すれ違う人の顔が一瞬だけ黒い目に見えることがある。
俺は、ちゃんと帰ってこれたんだろうか。
——それが今でも、わからない。
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わたしの考えとちがった-