Switchやろうぜ。

——アツシの声だった。

でも、アツシは今、物置にいるはずだ。どういうことだ？

混乱しながらも、玄関まで歩いてドアスコープを覗く。

そこには、さっきまで一緒に話していたアツシの姿があった。

「おーい、なにしてんだよ、トモキ〜。早く開けてくれよ」

頭がパニックになる。一体これはなんだ。

とりあえず開けて話を聞こうと、玄関に手をかけたその時——

『絶対に開けるな！！！』

背後から怒声が飛んできた。

振り向くと、アツシが立っていた。かなり大声を出したからか、口は叫んだ形のまま開いていた。

「開けないでくれ……」

「おい、これ一体なんなんだよ」

「分からんけど、とにかく開けるな。絶対にそいつを中に入れるな」

「お、おう……」

「さ、Switchやろうぜ。」

「そ、そうだな……」

俺の体はいつの間にか震えていた。それがアルコールのせいではないことだけは、確かだった。

玄関の外から、“アレ”の声が聞こえた。

「トモキー？どうしたんだよ〜、そんなに怒んなって」

「なー、開けてくれよー、俺なんかしたかー？」

「おーい、ほんと冗談やめようぜ〜、マジで開けてって」

妙に“普通っぽい”のが逆に怖かった。

部屋の方からも声がした。

「トモキー！早く来いよ〜、Switchやろうぜ〜！」

……どこか抑揚のない、アツシの声。

俺はどっちを信じるべきか迷っていた。玄関の外から、さらに声が響く。

「おい、トモキ！早く開けろ！」

「あけろあけろあけろあけろあけろ！！！！」

ﾄﾞﾝﾄﾞﾝ！！と扉を叩く音、ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ!ﾋﾟﾋﾟﾎﾟﾝ!ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ!と、狂ったように呼び鈴を鳴らす音がした。

狂っている。鍵をかけておいて、本当に良かった。そう思った。