そして林の中に消えていった。
前嶋もフェンスの穴をくぐると、林の中に分け入る。
辺りを見回すが、男の子の姿はなかった。
彼は記憶の糸を手繰りながら、獣道を歩き進む。
※※※※※※※※※※
やがて視界が開けた。
枯木に覆われた平地の片隅にはやはりあった。
切妻屋根の壊れ掛けた本殿が。
そこは前嶋と市之助くんだけの場所だったところ。
パシャ、パシャ、パシャ、パシャ、
前嶋は古びた鳥居を潜ると、ゆっくり本殿に向かって歩き進む。
その時には雨が止んでおり、立ち込めた雨雲の隙間から射す幾筋かの光が本殿の正面をあからさまにしていた。
そして正面に立つと軽く一礼した。
前嶋は階段を上り、入口扉をゆっくり観音開きしていく。
同時に午後の気だるい陽光が本殿室内の様子を、少しずつ露呈していく。
中はがらんとした8帖ほどの板の間のようだ。
そして陽光が室内左手片隅をあからさまにした途端、前嶋はハッと息を飲んだ。
人が座っている。
いや違う、
それはもう人ではなかった。
白いトレーナーに黒い半ズボン姿の骸(むくろ)が、膝を抱えて座っている。
肉を失ったどす黒い骸骨のような顔を入口辺りに向けて、、、
次の瞬間いきなり前嶋の脳裏に、ある光景が浮かび上がる。
それは夕暮れ時の頃、鬱蒼とした林に挟まれた獣道を歩く二人の姿。
一人は市之助くんだ。
彼の前を歩くのは、紺色のくたびれた作業着を着た中年の男。
やがて二人の前方は開け、あの廃神社が現れた。

























こんなに感動したものは初めてです。
名作じゃんけ。
コメントありがとうございます
─ねこじろう