ゆうた、本当にごめん

「なんで僕を置いて逃げたの」って。

怖くて、逃げたくて、ごめん！とも言えずにおれは走った。下駄箱目掛けて。

したら後ろからお前が追いかけてきたんだ。

明らかにゆうたじゃない、昨晩聞いた、抑揚のない声で、

「おーい、おーい、待ってくれよー」って。

繰り返し繰り返し言ってたよな。怖くて後ろを振り返れなかった。

ごめん、ごめん、って心の中では叫んでた。でも、必死だったから。口に出さなくてごめん。

死にものぐるいで走ったから、何とか逃げ出せた。その日は風呂にも怖くて入れなくて、母親に泣きついて一緒に寝てもらった。

次の朝お前は学校に居なかった。

ほっとした自分がいたんだよ。お前がいなくて。それも申し訳ないと思う。

結局お前は今も見つかっていない。

ごめんな、ゆうた。あの時、誰か一人でも大人に相談できていればよかったんだ。

俺たちはバレるのが怖いという自分勝手な理由でお前を2回も見殺しにした。

ごめん。ゆうた。心からそう思っている。だから許してくれ。

頼む。だから俺の部屋から出ていってくれ。