現実・・・これが現実なのだろうか・・・私の記憶と全く違う人生・・・いや、これは夢を見ているのだ。私はまだベッドの中にいて、夢を見ているに違いない。目覚めるんだ・・・目覚めるんだ・・・!! 私は一心不乱に念じてみた。もう神にでもすがるしかない。
私は、ベッドの上で目を覚ました。体がいうことを聞かない。だが、やはり夢だったのだ。なんだか恐ろしいような、寂しいような、変な気分になる夢だった・・・。
ふと見ると、傍にタカシがいた。小学生のタカシだ。
ほら見ろ、ちゃんとタカシが目の前にいるではないか。
「タカシ・・・どうした・・・学校はいいのか?」私は声をかけた。
するとタカシは後ろを向いて大声で叫んだ。
「パパー、お爺ちゃん、目ーあいたよぉ~」
間髪入れず、カーテンの後ろから男と女が入ってきた。
今朝、タカシだと名乗った男と、見ず知らずの若い女だ。
「お爺ちゃんね、ボクのことタカシって言ってたよ」
「そう・・・多分サトシちゃんとパパの子供時代を勘違いしてるのね」と、女が言う。
カーテンの後ろからもう一人の人物が入ってきた。いや、人ではない。
真っ黒な影の様な不気味なものが、音もなく入ってきた。
全身が闇のそいつは、目の部分だけが赤くギラギラと光っていた。
そして、低く唸るような声で私にあることを告げた。
「今夜、お迎えに上がります」
その恐怖で私は背筋が一気に凍り付いた。やつはいわゆる死神というものに違いない。
私はベッドの上で暴れた。
「うわぁぁぁ!!死神が、迎えに来る!! 今夜!! ・・・た、助けてくれ!!」
「あなた、急いで先生呼んできて!!」
「わ、わかった、サトシももう病室から出なさい!」
・・・・・・・・・・・・
その日の晩、ボクの父、佐山アツシは亡くなった。
昨年亡くった母を追うようにして・・・。
もう10年も闘病をつづけた末に、今朝は「お迎えが来る」などと予言めいたことを言ってこの世を去っていった。
この10年は大変だった。父の徘徊は年々ひどくなり、以前勤めていた会社にも
何度か迎えに行った。自分が一番輝いていたころを、忘れられなかったのかもしれない。
・・・もしかしたら、父は長い長い夢でも見ていたのかもしれない。
願わくば、天国で幸せでいてほしいものだ。
kanaです。読んでくれてありがとうございます。
最近すっかり目がよわくなりまして、怪談ひとつ書くだけで視力が一気に落ちてしまいます。
ですので、これまでよりずっと遅いペースで書いていこうかな、とか思ってます。
たまーに見てやってください。
kanaです。ちょっと加筆しました。
ラストで死神が「今夜、お迎えにあがります」というセリフをより印象付けるため、
中盤で小林部長に「もうすぐ迎えの方がいらっしゃると思いますよ」と言われた後に
「む、迎えが・・・来る・・・だと?」という佐山さんのセリフを追加しました。
これで伏線がより強調されたかな、と思います。
あと、タイトルも買えてより強調しようかと思ったのですが、奇々怪々の規定で
投稿後はタイトル改変は禁止らしいので、このまま行きます。
※↑スイマセン、前の書き込み
買えて ✖
変えて 〇
コメント欄は書き直しできないのでここで訂正させていただきます。
タイトルもこのままで、いいですよ。
世にも奇妙な物語にありそう