「引きずって来たんだよ」
何を、ですか?
我ながらトンチンカンな質問だな。
「決まってるじゃん。MだよM」
……そんな馬鹿な。たかだか手柄を横取りされたくらいで自殺なんかするものなのか?
「大変だったんだぜ。もうさ、色んなもんを引きずってまき散らしてさもうホーム中が大騒ぎさ」
「隣にいた当時の彼女なんて『目が合った』なんて言って失禁しながら気絶してたからな」
「俺もさ、あれからしばらくの間はさすがに刺身とホルモンは食えなかったからな」
先輩は笑いながらモツ煮をつまみ始める。
…人間というのは存外脆いもんだ。自殺なんかしなければもっと良いこともあるだろうに…..
「あれはな、自殺じゃないと俺は思ってるよ」
先輩は言う。
「あいつ教室で叫び終わった後でな『鉄道愛好家の最終形態に俺はなる』なんてワンピースみたいな事を言ってたからな」
「聞いた話だと、現場から自分の最期をを撮影したGoProも見つかったらしいしさ」
「なっ、やっぱりこいつらっておかしいんだよ。基地外なんだよ。本当に」
話し終わった先輩はモツ煮の汁まで一気に飲み干した。
先輩と別れ、自宅に到着した俺を妻が甲斐甲斐しく待ってくれていた。
「あなたおかえり〜。飲み直すんでしょ?でしょ?」
妻はそういうと、ニコニコしながら冷蔵庫から今日購入したであろうマグロのぶつ切りを取り出し、意気揚々と俺の前に並べるのだった。
鉄道人身事故データベース
※グロなし
https://jinshinjiko.com/
























本当に狂っているのは、私達なのかも知れませんね…。とても面白かったです!