友人は残っていた酒を飲み、再び眠った。
nさんは友人の夢の内容が頭に残ってしまい、浅い眠りしかできなく何度も目をさましてしまい、あまり眠れなかった。
朝起きてもすっきりしないnさんに対して友人は夢の事は気にしないで、といった。
昨日使ったコップを洗うと、また数本白い髪が指に絡みついていた。
コップの中にも毛が浮いていたがnさんは無言で流した。
その日も予定していた観光地に行き、関西の街の明るく活気のある雰囲気にnさんたちも旅行を楽しんだ。
前日以上に遅い時間に帰ってきた二人は、部屋の玄関に入ると異常な臭いを感じた。
まるで排せつ物が巻き散らかされたような悪臭だった。
nさんはlineでやりとりしていた民泊のオーナーに連絡した。
オーナーからすぐに返信が来たが、排水溝の臭いがたまに上がってくることがあるので換気してくれ、とのこと。
これ本当に排水溝の臭い?と友人が言いながら窓を開けた。
換気でだいぶ臭いは薄れたが、どこかからまだ臭いがしていた。
二人で部屋中を見まわし、においの原因を突き止めた。
それはリビングの天袋だった。悪臭はそこから来ていた。
部屋にあった椅子に乗り、友人が天袋を開けるとまた悪臭が広がった。
友人は鼻をつまみながら中を見た。
そこには真っ黒に汚れたスリッパと入れ歯がいくつも散らばっていた。
nさんは再びオーナーに連絡するとオーナーはすぐ行きます、と返した。
20分後、痩せた40代くらいの男女が現れた。
どうやら夫婦で民泊を経営しているらしい。
二人は両手にパンパンに中身の入ったビニール袋をもっていた。
男性は天袋の中の物をゴミ袋に入れ、ポケットから白い包み紙を取り出し天袋に置き、
ビニール袋から大量の消臭剤を出して並べた。
奥さんの方はキッチンへ行きシンク下の収納を開けるとそこにもぎっちり消臭剤がおかれていた。
それをゴミ袋へいれ、小さい箒とちりとりで中をはくとパラパラと白髪が出てきた。
シンク下の掃除を終え、新しい消臭剤を置くと二人はそそくさと出て行った。
出ていく際、男性が奥さんにむかって
もたなくなっているな
と言ったのをnさんは聞いた。
その日は疲れがたまっていたが二人ともベッドで休む気になれず、
明かりをつけ、リビングで朝になるまでとりとめもない話をつづけた。
二人とも部屋の事や夫婦の行動について言及することを避けた。
この部屋の何かを刺激したくなかった。
荷造りの確認をしようとスーツケースを出すと、チャックに白髪がからまっていた。
最寄り駅の始発が近づいた時間にnさんたちは部屋を出た。
まあまあ怖い