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グレートリングさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

死神の副業  贈る言葉
短編 2025/02/02 17:42 191view

第四話 贈る言葉
『今から数年後Hさんはもう一人の大崎恭二に刺されるわ』
俺は金づちで叩かれた気分だ。忘れていたが俺は歩行者天国で十数人を殺傷した犯罪者だった。
『それは本当なのか?』
『ついさっき三郎さんと事件現場を見たから間違いないわ。確かに貴男とHさんだった』
死神は走馬灯の中だけでなく過去や未来にも行けるのか?
『止めてくれればよかったのに』
『無理言わないで。死神は人間の運命に干渉できないの』
何かHを助ける方法はないのか?
『そうだ。俺を事件の日に連れて行ってくれ』
俺が俺の凶刃からHを守るのだ。
『代わりに刺されてもいい』
せめてもの罪滅ぼしだ。

『自分には会えないことを忘れたの?』
死神がそんな事を言っていた。
『それならHに歩行者天国に行かないように忠告する』
『それも無理ね。走馬灯が終われば生徒から大崎先生の記憶はなくなるわ』
万事休すである。俺にはHを助けられないのか?
『それなら手紙を出すのはどうだ』
事件が起きることを前もって手紙で教えるのだ。
『上手く行くかしら』
北風は否定も肯定もしなかった。
そして受け持ちのクラスの卒業式の日が来た。俺はクラスの人数分の色紙を用意した。
『これは俺からの贈る言葉だ』
本当はHだけに渡したかったがそれでは不自然になる。
『Aには幸。お前は幸せになってほしい。Bは情。もっと感情豊かになれ』

いよいよHの番がきた。
『Hは殺だ。今は意味がわからなくても数年後にわかる』
Hはポカンとしたが、直ぐにいつものジョークと気づいたようだ。
『みんな先生のことは忘れても色紙のことは忘れるなよ』
生徒たちが教室から去ると周りのの風景がぼやけ始めた。
『迎えに来たぞ。走馬灯はこれで終わりだ』
死神の雷神三郎だった。
『通行券を返して貰う』
俺が蝋燭の絵を出すと炎が消えていた。
『Hが助かるか見せてもらえないか?』
俺は通行券を死神に渡した。
『もう走馬灯は終わった。お前の姿は誰にも見えないし声も聞こえない』
それでも構わない。俺は死神の人力車に乗った。

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コメント(1)
  • 投稿者のグレートリングです。
    予定より長編になりましたが次回で完結します。もうしばらくお付き合いください。

    2025/02/02/17:53

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