夜の病院
投稿者:チョコラブ (3)
短編
2025/01/13
23:23
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「やめて…!助けて!」
「痛いッ…!殺さないで!」
――人間の悲鳴とは思えなかった。
私は耐えきれなくなり、職員の背中を突き飛ばして走り出した。
病院内は迷路のようだった。どこまで走っても同じような廊下が続く。
方向感覚が狂い、逃げ場がないことに気づいた頃、ふと視界の隅に動く影を見た。
そこにいたのは、長い黒髪の女だった。
顔は異様に青白く、患者服は血で染まっていた。
彼女はゆっくりとこちらを見つめ、震える声で囁いた。
「…どうしてここにいるの?」
「助けて、助けて、助けて…」
その声はだんだんと狂気を帯び、耳元で響くようになった。
気づけば、彼女は這うように私に近づいてきた。
目は黒い穴のようで、底知れない闇が広がっていた。
私は恐怖で足がすくみ、全力で逃げ出した。
どこへ向かっているのか分からない。ただ、あの女から逃げなければならなかった。
――そして、気づいたときには、自宅のベッドで目を覚ましていた。
夢だったのか?そう思ったが、心臓は激しく鼓動し、汗でシャツはびっしょり濡れていた。
安堵したのも束の間、ふと枕元のスマホに通知が届いていることに気づいた。
画面をのぞき込むと、そこには見覚えのない通知が表示されていた。
「こんばんは、渡邉隆志さん。あなたは――」
その瞬間、背筋に氷のような冷気が走った。
そして、耳元で囁く声が聞こえた。
「次は現実よ。」
振り返ると、そこには――あの女が、いた。
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