繭だった。
なんの繭に似ているかと言われるとそこまで虫に詳しくないので困ってしまうが、強いて言うなら蚕の繭にソレは似ていた。
昨日までアレが張り付いていたビルの壁には全長10m程の巨大な繭がたった一晩で形成されていた。
位置から考えても恐らく昼間に近くで見たアレと同じ個体なのは分かりきっているが、その繭は俺の中の今まで築き上げてきたオカルト的常識を嘲笑うかの如くそのビルの壁に張り付いて鎮座していたのだった。
「なんだ?…あそこからモスラでも飛び出してくんのか」
鎖はそれを聞いて「そうかもね」と少し小馬鹿にするように、愉快そうに返事していた。
「代わりに見とくから寝たら?」と促したがどうやら今夜はずっとアレを見ていたいらしく、鎖は椅子から動かなかったので俺はもう1個椅子を持ってくると鎖の隣で同じくモスラの卵を観察する運びとなった。
その割にはその夜、繭になった事以外には特になにも起きず、なんだか時間を無駄にしたような思いに駆られながらバイトに出勤した。
いつも通り5号室を清掃してる間も鎖はずっと窓の外を眺めていた、スイーツ癖も目の前のオカルト現象を前になりを潜めているのか床が散らからないので、床というのは本来スイーツのゴミが自然発生するものではなかったか?と疑問符を浮かべながら頭を掻いた。
仕事が早く終わってしまったので俺は相変わらずゴーストウォッチングに勤しんでいる鎖を尻目に退勤時間までスイートルームのベッドで昼寝をして過ごした。
なんて素晴らしいバイトだ。
そしてまた夜。
「お前今日も寝ねーの」
窓の外を眺めながら鎖は「見過ごしたくないのよ」と小さく答える。
一体なにを待っている事やら。
「じゃあいいや俺今日は普通に寝るね」と返すとシッシッと俺を追い払うようなジェスチャーをされたのでさっさと床に就いた。
深夜。
「ちょっと、起きなさい」
頬っぺをチョンチョンとされ目が覚める。
目を開くとベッドの脇で俺を見下ろす鎖の顔が写った。
























けっこうこわかったです。
さすがに44Pもあると途中で挫折しました。
ぜひ今度5Pくらいの短縮版を書いてください。
怖くはない。だが悪くはない。
しんれいかいきみすてりーふうの、とあるぼうけんたん、ちょうへん。
主人公が俺っ娘だとは、ある一節まできがつかなかった 。
いつも空いている席の正体に続く、二作品目読ませていただきました。ジャンルとしては、心霊というより田舎・伝承系でしょうか。
師匠シリーズ、なつのさんシリーズのように登場人物に統一性があり、続編小説を読んでいるようでとても面白いし、なるほど、と思える話でした。次の話も楽しみにしています。
一作品目の話と、こちらの話は、朗読させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
俺は高2なのに1コ上の石野さん大学生なんです?