ちきしょう、せめて顔に唾でもかけてやると女の顔を見やり狙いを定めた。
「えっ」
思わず声が漏れた。
10秒間ほど目が合って思わぬ衝撃を受けたからだ。
知ってる。
俺はこの女を知っている。
近くでマジマジと見て思い出した。
首を絞められ殺されそうになっているというのに俺の頭の中には中学時代の淡い記憶が溢れ出た。
現実の時間ではおおよそ3秒ほどだっただろう。
「きり……しま?」
俺の首を締める手の力が一瞬弱まる。
目からはより一層黒い液体がドロドロと号泣するかのように垂れ流れ始めた。
もし、この女が霧島なら、それは、そういう事だ。
霧島玲奈(きりしまれいな)
俺が中学2年まで頻繁に絡んでいた女。
彼女は俺の中学では割と有名だった。
盲目の少女として。
小学校低学年で事故にあったかなにかで両目の視力を失ってしまったらしい。
彼女は人に嫌われる事を恐れ、また周りの人間もそんな彼女の傍にいる事で彼女の介助をしなくてはならない状況を避けた結果。
霧島玲奈はいつも1人だった。
放課後になるといつも図書室へ行き、点字で書かれた本を1人で読んでいた。
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えっ、最後びっくりした
「床に落ちた何か」てなんだったの?