しかしそれは右へ左へと通り過ぎるばかりでこの教室の前に留まることは無かった。
これも御札のおかげだろうか。
たまにどこかの教室を叩いているような音も聞こえたがこの教室が叩かれることは無い。
あと30分だ、頑張ろう。
と言ってもやる事は無いのだが。
癖でスマホの電源ボタンを押す。
広告制作に費用を裂き過ぎてる上に蓋を開ければどこかで見たような中国を感じざるを得ない感じのパズルゲームを3つほどクリアした辺りでスマホ君は力尽きてしまった。
画面は黒いままだ。
ドン…ドンドン……ドドドン。
ビクッと廊下側を見る。
扉が開けられた訳ではないがここに来て初めてこの教室の壁が叩かれた。
やっこさん、12時が近づくに連れてドンドンと焦って来ているようだった。
なにやら女の叫び声のような物も時折聞こえてくる。
向こうも必死なのだろうか。
そもそもなぜ12時なのかとか、あの女が俺をどうしたいのかとか、そこら辺の原理は全く分からないのだが。
そんな調子で時計と廊下側の壁で視線を交互に右往左往しながら怯えている時間が流れた。
さっきまでは何気なく過ごせたのに、ここに来て急に時間の進みが遅くなったように感じた。
念の為、掃除用具入れに入っていたホウキを構えて教室の角に退避する。
あと少し、あと数分の辛抱だ。
そんな調子で最後の時間を迎えたのだった。
しばらくすると教室の前からハッキリとした人の声が聞こえてきた。
「来たわよ…さぁ開けなさい」
鎖の声だ。
一応5時間ちょっと前に聞いたはずの声だったがそれがとても久しぶりに感じる。
教室の時計を見る。
時刻は12時1分を指している。
予定通りというわけか。
俺は何の疑惑も持たずに鍵を開け教室の扉を開け放った。

























えっ、最後びっくりした
「床に落ちた何か」てなんだったの?