だが、しかしだ。
俺はこの女の断り方に少し違和感を感じていた。
普通やりたくないからやらない場合「嫌」と答えるだろう、しかし出来ないからやらない場合は「無理」と答えるだろう。
とどのつまりできない事はないが面倒くさいので「嫌」なのではないかと思っていたのだ。
「鎖…お前ならやろうと思えば何とかできるんじゃないか」
「はぁ……」
この女のため息ときたら、本当に面倒くさそうに息を吐き出すのだ。
目の前の困っている人をここまで無げにできるのもまた才能なのか。
「私なんかに頼ってないで、大人しく寺にでも駆け込んだら?」
「寺に駆け込んだら助かるのか?」
「無理ね…きっと」
「じゃなんで提案したんだよ」
「厄介払い」
目の前の女はサクサクとカヌレを美味しそうに齧っている。
この女とのやり取りに少し気が抜けたのか、ちょっとだけ食欲を感じる。
やっぱなんか持ってくれば良かった。
「なぁ頼む…何とかしてくれ」
俺は、土下座した。
きっと放課後にでもなればこの女は雲のように存在感を霧散させて、なりを潜めてしまう。
本気で助けを求められるのは今しかないと思った。
鎖は何も言わない、がしばらくしてカシャッと音がした。
なんだ?と思って頭をあげると鎖は俺の土下座姿を携帯で写真を撮っていた。
なんだか楽しそうだ。
「ちょ、おいっっ」
この話は怖かったですか?
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えっ、最後びっくりした
「床に落ちた何か」てなんだったの?