民宿
投稿者:きのこ (15)
昔、旅行に出かけることは悪、みたいな風潮があった時期があったのですが、これはその時期の話です。
私は無類の旅行好きで、連休があれば色々なところへ旅行していました。
旅行好きとは言っても、観光が好きというわけではなく、いつもとは違う場所でゆっくりするというのが好きなのです。
なので、旅行先で名所に行くとか、何か名物料理を食べに行くというようなことはあまりしてませんでした。
なので、旅行先は特にこだわりはなく、宿泊するところに温泉があれば嬉しいくらいの感じで選んでいました。
そんなとき、例のアレが流行ってしまい、日本中が自粛ムードになりました。
ホテルなども休業しているところが多くなり、出歩くこと自体が白い目で見られてしまう有様です。
それでも私は旅行を諦めきれず、色々と探し回りました。
そして見つけたのが、山奥にある小さな民宿。
一人でも大丈夫かと電話をかけて確認したところ、問題ないとの返事をいただき、さっそく予約しました。
当日は民宿に辿り着くまでは結構、苦労しましたが、人通りがほとんどなかったので白い目で見られることもなく、トラブルにも巻き込まれずに済みました。
到着すると30代の綺麗な女性が出迎えてくれました。
部屋に案内されるときに、この民宿はその女性一人が切り盛りしているのだと話してくれました。
なんでも、旦那さんは出稼ぎに出ているとのことです。
こんな山奥で一人で民宿をやるなんて、怖くないですか? と聞くと、その女性はクスクスと笑います。
「私を襲うなんて物好きはいませんよ」、と言うので、つい、そんなことないですよと言ってしまったんです。
すると、女性は「あら、あなたは襲う気なんですか?」と笑いながら返してきました。
そんな妖艶な微笑みは、男であれば誰でもドキッとしてしまうでしょう。
女性はとても気さくな人で、私も引き込まれて色々と話をしました。
一人暮らしをしていること、親とはあまり連絡を取っていないこと、どんなことをしているかなどなど。
考えてみると、個人情報のほとんどを話してしまった気がします。
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