いけず石
投稿者:ASAHI (2)
それ、髪の毛だったそうです。
ちょうどさっき見た生首の老婆のような白髪の髪の毛が何本も、石にこびりついていて・・・
その時、その民家の戸がガラガラと開く音が聞こえて、Aは慌てて車に戻って、逃げ帰ってきたそうです。
一応、お祓いとか言ったほうがいいんじゃない?なんて私達が話をしていると、一緒に聞いていたもう一人の友人、Bがにやにやしてるんです。
どうしたんだと聞いてみると、Bは高校くらいまで京都に住んでたみたいで、学生の時に流行った、いけず石の噂を思い出してしまったから笑ってしまったっていうんです。
その噂というのは、京都では嫁姑の仲が特に悪いの家では、姑が先に亡くなった際、嫁がこっそりと行う風習があるという話で。
まず、葬式の業者に頼んだり、あるいは寝ずの番に自ら故人である姑の遺髪を抜き取る。その際は必ず故人の後ろ髪を抜き取るそうです。
そしてその髪を家の前の頭部に見立てた丸い石の下に敷くと、故人は成仏できず、石に魂が現世に縫い留められてとても長く苦しむそうです。
故にその石はいけず石───漢字で書くと「逝頭石」あるいは「逝不石」という名前になったとか。
ちなみに後ろ髪を取る理由は「後ろ髪を引かれる」という慣用句を利用して、呪いとし、故人の魂を現世に長く留め、できるだけ長く苦しめるためだそうです。
私たちにとってはぞっとする話だったのですが、Bに言わせれば子供だましな怪談だそうで、
曰く
「大体、実際にそんな風習があったとしても、遺髪取るのに業者なんかに頼んだら、相手も何するのか一瞬で察すると思わへん?
実の親子やったらともかく、義理の親の遺髪欲しがる人なんて普通おらへんし。
寝ずの番に自分で取るにしても、遺体のある棺に手を突っ込んで頭抱き起して髪を抜くとか絶対嫌やろ?」
じゃあ、Aが見た石についていた髪の毛はどう説明するんだ、と聞くと、再びBは笑いながら
「昔なぁ、度胸試しってことで同級生のバカどもが近所のいけず石を無理やりひっくり返したことがあったんやけど、
転がしてみると実際に長い白髪みたいな糸みたいなものがようさんくっついてて、
みんな腰抜かしてパニックになって・・・それで学校にバレてすごい問題になってな。
いや、俺は参加してへんよ、ちょっと遠巻きに離れて見てただけで。
まぁ、その白髪の正体って、いけず石が道に転がれへんように、固定するために石材用の接着剤を使うことがあるらしいんやけど、
あれ、強い力で無理やり引きはがすと、納豆みたいに糸引くねん。
基本汚い石と地面の間にひっついとるから、遠目で見ると少し汚れた白髪みたいに見えるねんな。
Aもそれが髪の毛に見えたから、いけず石の凹凸(おうとつ)がしわくちゃの婆さんの顔に見えて、生首と見間ち違うたんちゃう?」
Bの話は実際、現実的で説得力のある説だったのでみんな大体納得してその話は終わりました。
Aは後日、神社に行って車と一緒にお祓いしてもらったようですが・・・結局車の修理代と合わせて5万かかった、と嘆いてました。
今になって思うのですが、Aは前述のとおり自分の興味のあるもの以外にはお金を出し渋るところがあったのですが、
Bの話を聞いてAが本当に納得したのなら、数万払って効果のあるのかわからないお祓いにわざわざ行くのでしょうか?
もしかしたらバンパーをこすった時、車についたのかもしれませんね。いけず石の裏に塗ってある接着剤と一緒に本物の髪の毛が───
私の怪談はここで終わりです。駄文大変失礼しました。
もし京都を自分の車で旅行する際は運転には十分お気を付けください。
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