夢遊病
投稿者:きのこ (5)
とてもじゃないが、普通とは言えない。
幸い私には、とても力の強い守護霊か何かが憑いてくれていたので、そのおかげで、今も元気に過ごせている。守ってくれている何かの力が強くなければ、子供の頃にとっくに死んでいただろう。
そんな家で生まれ育ったので、自分が夜中に寝ながら徘徊していても、別におかしくはないのかな。とも思った。
ただ、こんな家に生まれたのだから仕方ない、と諦めてはいても、怖いものはやっぱり嫌なので、夜は何も視ないように、早く寝るのが日課になっていた。
人ならざるもの達は昼間も当然いるが、夜になるとよく視えるようになるし、音や匂いも強くなる。
気付いてしまったのがバレると寄ってくるので、夜中に何かの気配を感じても、寝たふりをしてやり過ごした。
私は、週末だけでも物の怪だらけの家から逃げたくて、仲の良い友人の家や、親戚の家に泊まりに行ったりもしていた。すると、その時は夜中に徘徊することはなく、毎回布団の中で目覚めることができた。
実家の寝室で寝る時だけ、夢遊病の症状が出ていたのだ。
そして、夢遊病が1番酷かった頃、毛布一枚では寒くなってきた秋口のことだった。やっと、この不可解な病気の原因が判明する——。
その日も夜中にとても寒くなり、身体がぶるりと震えて目が覚めた。
部屋の中は豆電球がついているはずなのに、薄目を開けると、なぜか真っ暗だ。それに布団ではなく、冷たい床に寝転がっているのが分かった。
——また、寝ている間に廊下に出てしまったのかな。
そう思った。
とても眠かったのでそのまま廊下で寝るか、頑張って布団に戻るか葛藤かっとうしたが、眠過ぎて身体も動きそうにない。
私は結局布団に戻るのを諦めて、その場で目を閉じた。
するとその時、顔にふわっと生暖かい風が当たり、何かの気配を感じた。
明らかに、目の前に何かが立っているのが分かる。
上に大きな感じがしたので、最初は父かなと思った。
しかし、目の前に立った大きなものは、全く動かない。
考えている内に少し頭がはっきりとしてきて、何かがおかしいなと思った。父なら、何でこんな所で寝ているんだ。と声をかけるなり、子供なので抱きかかえて、部屋に連れて行ったりするはずだ。
眠くて頭は回っていなかったが、何故だろうと不思議に思った。私は横向きに寝転がっていたので、下になっている方の目を少しだけ開けて、様子を伺う。
すると、ぼんやりと発光した感じの、人の足が見えた。それは大きくて、大人の男性の足に見える。薄い黄色の生地の服を着ていて、裸足だった。
よく部屋の中で視る、押し入れに向かって歩いている人たちは、暗い場所にいる人がそのままうっすらと透けている感じなのに、目の前の男性はぼんやりと発光していたので、全く違うものなのだろうと思った。
何となく気配も強い感じがする。
金縛りにはなっていなかったが、起きているとバレたら何かされるかもしれないと思い、そのまま寝たふりをした。
——早くどこかに行ってくれ。
そう願ったが、男性は私のそばから離れようとしない。
男性は時々私の周りをぐるりと歩き、そして、また正面へ戻ってくる。という行動を何度も繰り返した。
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