某カルト集団内の人間関係
投稿者:セイスケくん (20)
某カルト集団では、内部の上下関係が「アベル」と「カイン」という聖書由来の概念で表現されている。
この関係性は、企業の上司と部下のように明確に規定され、「アベル」は「善良で従順」、「カイン」は「反抗的」というラベリングが日常的に行われる。
それに伴い、立場に基づく対立や抑圧が絶えない状況が生じている。
例えば、集団の会議や作業では、「アベル」とされる者が「カイン」とされる者に指導を行い、後者には無条件の服従が求められる。
もし「カイン」の立場の者が不満や異議を示すと、「反抗的」と烙印を押され、信仰心の不足が指摘される。
このようにして、信者たちは絶えず自らの立場を意識し、上下関係に基づく信仰心の確認を強いられる。
不自由なこの構図は、信者たちに精神的な負担を強いるだけでなく、内面的な葛藤を生む原因ともなっている。
そんな集団の中で、私はある女性信者と忘れがたい経験をした。
彼女は「霊的に異常」と噂され、外見にはどことなくアイドルのような面影があったが、内面には激しい葛藤を抱えているようだった。
私は彼女と同じ部署で作業をすることになったが、突如として彼女の態度が一変した。
彼女は険しい目つきで声を荒げ、「あなたはアベル・カインの原則を理解していない!」と非難し始めた。
どうやら彼女は、私を「アベル」、自分を「カイン」と位置づけ、その立場に基づいて私を「勘違いして威張り散らしている者」と見なしていたようだ。
その怒りは単なる感情の発露ではなく、彼女が集団内で受けてきた抑圧や苦悩が蓄積された結果のように感じられた。
彼女は「カイン」として下に位置づけられ、何をしても評価されず、理不尽な指導を受け続けてきた。
その過程で、自分がいくら努力しても「アベル」として認められることはなく、「反抗的」というレッテルを貼られるたびに自尊心を傷つけられてきたのだ。
このような経験が積み重なり、彼女の中には深い不満と絶望感が生まれていた。
その抑圧が私に向けられた形で爆発したのである。
彼女の主張は「アベルであるならカインを愛するべきだ」という内容だった。
端的に言えば「もっと優しくしろ」という要求だったが、そのような攻撃的な態度を見せられては、受け入れるのは難しい。
私も思わず「誰に向かってものを言っているんだ?」と言い返してしまった。
その言葉が彼女の怒りにさらに火を注ぎ、状況は一気に混乱へと陥った。
後に、彼女の父親が私を訪ねてきた。
彼もまた熱心な信者で、私に詰め寄り、長々と説教を始めた。
その内容は「娘を傷つけた私の態度」を非難するものだったが、娘への愛情と集団への忠誠心の間で揺れ動く複雑な感情が滲み出ていた。
彼の言葉には一種の狂気じみた熱意が宿っていたが、私は冷静に、自分の発言の意図を説明し、「無理に上下関係を押し付け、感情的に攻撃するのは不適切だ」と伝えた。
その結果、彼は多少なりとも理解を示し、帰っていった。
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