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とくのしんさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

シリアルキラーは伝染する
長編 2024/11/01 10:55 2,000view
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シリアルキラーは伝染する

1991年11月、トラック運転手のマーク・ハドソンがジョージア州アトランタの北部に位置するアミカローラ フォールズ州立公園付近を深夜通行中、突然車道に飛び出してきた女性に助けを求められた。女性の名はキャサリン・ディアス。全身泥に塗れており、服装は乱れ多くの傷が見て取れた。慌てたマークはすぐにキャサリンを車に乗せると、近くのガソリンスタンドまで移動。スタンドに到着後すぐに警察に連絡する。程なくして近くを巡回中のパトカーが到着し、無事キャサリンは保護された。

キャサリンは全身に打撲創、擦過痕、切創といった外傷のみならず、左上腕と肋骨に骨折が見られた。幸い命に別状はなかったが、衰弱と脱水症状が見られたことから約3週間の入院が必要となった。

キャサリンの回復を待ち、警察は事情聴取を行った。キャサリンは20歳の大学生、長期の夏休みを利用し、ヒッチハイクしながら全米を旅していた。ジョージア州から北のケンタッキー州へ向かうため、ヒッチハイクで車を拾った。

ヒッチハイクに応じたのは40~50代の中年男性で、名前をデイブと名乗った。デイブはアトランタから北東へ105km先のダロネガに住んでおり、そこのモーテルまで乗せていくと言った。デイブの第一印象はひょうきんで明るい性格だったそうだ。
デイブはアトランタまで買い物に来たこと、自身は地元で教師をしていることを明かした。教師と聞いて、キャサリンはすっかり安心した。

確かに彼のピックアップトラックには多くの荷物が積んであった。聞けば教師をする傍ら、農家を兼業しているという。ダロネガに真っすぐ進んでいると思いきや、アミカローラ フォールズ州立公園に向かっていることに気づく。州立公園はダロネガの西に位置するため、方向が違うことを尋ねると、キャサリンに見せたいものがあるとデイブは言った。

州立公園付近に到着すると、人気のない場所に車を停車させた。するとデイブは先程までの陽気な性格から、狂暴かつ危険な性格へと変貌した。いきなりキャサリンを激しく罵ったかと思えば、暴力を振るいだし、挙句には性的暴行を加えた。行為中も暴力だけでなく、大きなサバイバルナイフで切り付けるなどの行為に及んだ。一連の性的行為が終わるとデイブは満足したように、煙草に火をつけ、車の外に出て用を足しにいった。その隙を見て、キャサリンは逃げ出した。

以上が、キャサリンの供述である。

これを受けて州警察はダロネガに住むというデイブを捜索。捜索してすぐにデイブの逮捕に至った。本人がキャサリンに語ったように、ダロネガに住み教師をしていた。そのためスピード逮捕することができた。

これで女子大学生を襲った暴行事件はこれで幕引きになるかと思いきや、思わぬ方向へと事件は進展する。デイブの生家を捜索したところ、地下室から少なくとも4人の遺体が発見された。遺体はどれも損傷が激しかった。デイブ本人に地下室の遺体についてと尋問すると、裏庭にも死体を埋めたと供述した。

供述通りに裏庭から少なくとも12体の白骨体が発見された。“少なくとも”というのは、あくまでも発見された頭蓋骨の数であり、発見された人骨を復元していくと余りが出てしまうことがわかった。頭蓋骨の数が12体分に対し大腿骨が左右24本あるはずが、実際には27本見つかっている。その他不明の人骨が多数見つかっていることから、被害者はそれ以上と考えられた。

デイブの供述では全部で24人を殺害したといい、主に若い女性がターゲットだったが、少年も標的にしていたことを明かしている。事実12~18歳の少年のものと思われる人骨も見つかっているが、一部は現在でも身元特定には至っていない。多くは行方不明者として処理されていたが、この事件でデイブに殺害されていることが判明した。

デイブは教師という立場を利用し、家出した少年少女を言葉巧みに誘い出し、性的暴行を加えたあとに殺害している。殺害方法は様々であり、絞殺や撲殺、刺殺、中には生きたまま焼死させられたケースもあった。この連続殺人事件は瞬く間に全米で話題となり、デイブはシリアルキラーとして一躍有名になった。

さらにデイブを有名にしたのは裁判での証言である。それまで一貫して罪を認めていたデイブが一転、自分は悪魔に身体を乗っ取られていたと無罪を主張したのだ。しかし、供述内容と敷地内からの遺体発見が動かぬ証拠として、逮捕から10年後に死刑判決を受けている。

ここまでが事件の概要である。これだけでも確かに怖い話として語り継がれるものであるが、この話には続きがある。
事件から5年後、地元ジョージア大学で心理学を専攻していた中国系アメリカのスティーブ・フェイ・ロンは、この事件に興味を持った。卒論の題材にこの猟奇的殺人事件を起こした“デイブ”の深層心理に迫りたいという欲求から、デイブに手紙を出してコンタクトを取ることにした。

「私はジョージア大学に通うスティーブ・フェイ・ロンである。心理学を専攻しており、あなたが起こした事件に興味を持った。そしてあなたの事を知りたいと思った。あなたがなぜ犯罪に及んだのかそれを知りたい」

ロンは自身がジョージア大学に通う大学生であることを明かし、心理学の側面からデイブについて知りたいことを率直に伝えた。すると2週間後にデイブから返答があった。

「ロン、手紙をありがとう。知っての通り、私は悪魔に魅入られて事件を起こしてしまった。悪魔に隙を見せたことを大変後悔している。一人でも多くの人に私が無罪であること、そして私自身を知って欲しいと思っている」
ロンに届いた手紙には、自身が悪魔によって事件を起こしてしまったことについて書かれていた。これからロンは手紙を通じてデイブという人間を知っていくことになる。

デイブはダロネガの農家の長男として生まれた。幼少期は身体が弱く、病弱な少年だったという。そんな両親は愛情を込めて彼を育てたという。彼は身体は弱かったが勉強はできたため、将来は農家ではなく別の職業に就きたいと考えるようになっていった。両親もその考えに賛同し、将来は教師になることを勧めたそうだ。

彼にはエリックという双子の兄がいた。エリックはデイブと違い健康的な男子だった。内気なデイブと違い、エリックは幼少期から社交的で陽気な性格なことから人気者だった。そんなエリックに対し、デイブは常に劣等感を持っていたという。

エリックの影に隠れて生きるデイブにある転機が訪れる。兄エリックが交通事故で亡くなったのだ。デイブが10歳のときである。エリックを失った悲しみが一家を包む。陽気なエリックを失い、悲しみに打ちひしがれながらも両親はそれまで以上にデイブを愛した。エリックの影に隠れていたデイブは、両親の愛を一手に受けるようになり悲しみよりも充足感を覚えたという。

その出来事についてデイブはいった。

「エリックが死んだのは自分のせいだと」

あるとき、デイブは自宅の地下室から自分を呼ぶ声に気づいた。一人留守番をしていたデイブは、地下室に向かった。暗い階段を下りると、部屋の隅に置かれた大きな鏡から自分を呼ぶ声がすることに気づく。近づくとそこには真っ赤な身体の悪魔がいた。そして悪魔は言った。

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コメント(2)
  • 細かいことですが後者は大量殺人犯ではあるがシリアルキラーではない。どうせなら前者の秩序型と言われるやり方も踏襲すれば尚伝染の怖さは増すと思います。

    2024/11/02/09:02
  • 勉強になります

    2024/11/05/10:41

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