ただそこにいるだけのものたちへの鎮魂歌
投稿者:ねこじろう (147)
長編
2024/11/01
03:22
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「人間って面白いものでね、愛していた人のところとか日頃からよく行っていたところに居たがるものなのよねえ」
次の瞬間、突然大島の脳裏に一人の老人の姿が浮かんだ。
泥に汚れた農作業着を身に付けたその大柄の男は、木立を背景にしてから日に焼けた顔いっぱい優しい笑顔を浮かべている。
男には左腕がない。
━じいちゃんだ、、、
さっき路地で会った男は亡くなったじいちゃんだったんだ。
大島が大きく目を見開き息を飲んでいると、今度ピエロはある方を指差す。
大島もそこに視線をやった。
そこは憩いの広場外側を囲む通路の辺り。
一人の若い女性が片足を引き摺りながらよろよろ歩いている。
黒のボディースーツみたいな奇妙な格好をしており、その大きく開かれた両眼は血走り必死な様子で歩いていた。
彼女の姿もどこか虚ろでおぼろげだ。
どうやら憩いの広場の周囲を歩いているようだ。
「あの娘、今朝からずっとああしてひたすら歩き続けているのよ。いったい誰を探しているのかしらねえ」
そう言ってピエロは真っ赤な唇の口角を上げニタリと笑う。
※※※※※※※※※※
その時だった。
再び大島の脳内にパッと一つの映像が浮かび上がる。
それは断片的だが鮮明なもの。
そして何かに気が付いたかのように「あっ!」と声を出した。
「フフフ、やっと思い出したみたいねえ」
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死後の世界だったのか!