ただそこにいるだけのものたちへの鎮魂歌
投稿者:ねこじろう (147)
長編
2024/11/01
03:22
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ベンチにはポツンポツンと数人の人が座っているだけだ。
皆何をする訳でもなく、ただ虚ろな目でボンヤリしている。
大島はその一つに座った。
その時彼は何故だろう心の奥底に懐かしいものを感じた。
それはかつて遠い昔に訪れたところにいった時に感じるデジャブな感覚。
ふと正面に視線をやると、噴水の傍らに男が一人佇んでいるのに気付く。
相変わらず店内には空虚で安っぽいBGMが流れていた。
広場の片隅にはピエロがいて愛想を振り撒きながら、通路を歩くお客さんに白い風船を手渡していた。
真っ赤なアフロヘアーに赤のボーダー柄のシャツ。
赤のデカイ靴を履いた陽気な奴だ。
時間はどんよりと過ぎていた。
※※※※※※※※※※
そしてどれ程経った頃か?
━あれ?あの人まだあそこにいる。
それは上下黒のジャージ姿の初老の男性。
正面にある噴水の傍らで何をするわけでもなく、ただじっと立ち尽くしている。
彼もさっき通路にいたおぼろげな者たちのように、ぼんやりセピア色に霞んでいるようだ。
━そういえば、俺がここに来た時くらいからあそこでああしているような、、、
と訝しげに思っていると、
「あれはただあそこにいるだけの人よ」
突然右側から声がした。
ドキリとして横を見ると、いつの間にかピエロが隣で笑っている。
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死後の世界だったのか!