「で…け ば…た」
投稿者:ねこじろう (147)
愛実とは旧来の友人で中高それから同じ短大に進学した。
ただ卒業してからは別々の仕事についたせいでほとんど会うことはなくて、たまに電話やラインでお互いの近況を報告しあうくらいの関係だった。
私はとある会社の事務職を今も続けている。
対して愛実は堪え性が足りないのか最初に就職した堅実な会社は早々に辞め、あとはバイトを転々とやりながら何とか生活していたみたいなんだけど、最近は昼間の仕事ではやっていけないと、クラブのホステスをやっていたということだった。
愛実も私も今年30歳になる。
私は未だに独身だが、愛実は2ヶ月前の初春に結婚した。
式にも呼ばれたのだが相手は愛美よりかなり歳上で会社役員をしていて優しそうな感じなのだが、見た目的にはどう考えても彼女のタイプとは言えないなというのが、その時の正直な感想だった。
だけど先日の夕方久しぶりに駅近くの喫茶店で会った時、私は愛実が早くも離婚を考えているということを聞く。
※※※※※※※※※※
「え、なんで?」
突然意外な事実を聞かされた私は、テーブルに置かれたコーヒーに伸ばした手を思わず止めた。
正面に座る派手なメイクの愛実は眉間に皺を寄せながらタバコをふかした後、訥々と話しだした。
「学(まなぶ)とはお店で知り合ったんだ。
年齢はアラフィフで見た目はハゲ、デブ、ちびの三重苦の、とてもタイプとは言えなかったんだけどさあ、仕事はIT関連の会社を経営していて性格は穏やか。
年収もかなり良さそうだったし投資とかもやっていたみたいだから、預貯金もかなりあるようだったな。
そして親もすでに他界していて面倒な介護の必要もない。
しかも私のホストに入れ込んだ頃の借金も中身も聞かずちゃっちゃっと精算してくれて、その男気に惚れてから交際期間も僅かで結婚したんだ。
まあ私も今年三十路だしクラブの嬢としての賞味期限もそろそろ切れかけてきてたんで、専業主婦という安住の地位も悪くないと思ったしね。
それと学のやつ糖尿病持ちで体も強くなさそうで多分私より先に逝くだろうから、老後は彼の残した資産で安泰かなと。
新居は彼がかつて母親と一緒に暮らしていた郊外にある、平屋建てのモダンな一軒家。
母親が病気で亡くなられてからは、彼一人で暮らしていたみたい。
ただ今となって後悔しているのはさあ、短い交際期間ということもあり、それまで彼の家にお邪魔してなかったということだったんだ」
「後悔?
学さんの家に行ってなかったことがどうして、後悔なの?」
私は愛実の俯いた顔に尋ねる。
毎回、楽しみにしてます。
コメントありがとうございます。
━ねこじろう
面白かったです。 次回も楽しみに待ってます。
売女?
コメントありがとうございます
そうです、ばいた(売女)ですね
━ねこじろう
なるほど、ありがとござます