デリヘルドライバーの悲劇

店長の話によると、メイコさんは僕がドライバーを辞めてから徐々におかしくなっていったそうです。
元々細身だったのが更にガリガリに痩せて、接客中に爆睡したり客の問いかけに反応しなかったり、待機室でいきなり他の女の子に掴みかかって叫んだり、薬でもやってるのかと思うほど変わり果ててしまったそうです。
店長は他の女の子の為にもメイコさんをクビにしようとしましたが、奥さんはメイコさんに恩があるため、クビにするのを反対したそうです。
結局話し合ってもいい案が浮かばず、どうしようかと悩んでいた矢先、メイコさんが自宅の風呂場で手首を切って自殺したと聞いたそうです。

僕はただただ驚きました。
でも、その後の店長の言葉に更に驚きました。
「メイコの奴、お前の家に行ったりしてなかったか？弁当とか持ってきたりしてなかったか？」
「え、なんでですか？メイコさんは僕の家は知らないと思いますけど…」

と、ここでドアノブにかけられていた弁当のことを思い出しました。あれはまさか…
「いや、実はメイコがお前の履歴書を見てたことがあってな。注意したらすぐ戻してたけど、もしかしたらあれで住所を確認してたのかと思って…」
背筋がゾッとしました。
店長は、メイコさんが僕に対して本気で恋心を抱いていることに気づいていたそうです。

メイコさんが自殺したのは、僕の部屋に弁当が掛けてあった日の翌日でした。
もしかしたら何処かから僕が弁当を捨てるのを見ていたのだろうか。もしそれが自殺の原因のひとつだったとしたら…

彼女に対する嫌がらせの数々もメイコさんの怨念だったのか、今となってはわかりません。確かめる術もありません。
今でも時々メイコさんの夢を見ますが、正直僕にはもうどうすることもできません。