【突撃!噂の心霊スポット】
投稿者:ねこじろう (147)
「僕らね実はYouTuberしてましてね、今日来たのも、この『菊の間』に泊まるためなんです。もしよろしければ、室内とか館内とか撮影させてもらいたいのですが」
藤野は村井の方を見て「全然構いませんよ。宣伝にもなりますから、むしろどうぞどうぞという感じです」と言った後、続ける。
「そうですか、YouTuberさんでしたか。
だと思いましたよ。
私もね最近泊まられた若いカップルにお聴きしたのですがね。
当館が今全国の有名心霊スポットの一つになっているそうで、まあおかげで当館もここ数年は何とか生き延びることが出来てましてね、今月も夏休み期間ということもあって、ほぼ全室予約で埋まっている状態ですわ。
まあね私どもとしましては数年前にここであんな不幸事があり、その後に宿泊されたお客様の何人かから幽霊が出ると苦情があった際は金輪際ここは封鎖しようと思ったほどだったんです。
でも誰が広めたのか噂が広がりましてね、意外にも全国からこの部屋に泊まりたいという方々が訪れるようになってからは、普通に部屋を解放するようになってしまったんですよ。
今となってはSNS様様ですな、ハハハハハ
まあ、おかしな時代になったものですわ」
すると小暮がお茶を一口飲むと、
「もし良かったら、その数年前の不幸事というのを教えていただけないですか?」と言って藤野を見る。
改めて畳に正座した藤野は二人の顔を交互に見た後、口を開いた。
「あれは五年前の今日のような暑い時分でした。
お恥ずかしい話なのですが、あの頃はコロナ禍もあり、お客様は激減しており、女将とこれからどうしようか?店を閉めようか?と途方に暮れていたような酷い状態だったのです。
そんなある日の夕暮れ時に、一人の女性がふらりとここに立ち寄られたんです。
帽子を目深にかぶり地味な出で立ちをした30過ぎくらいの方でした。
私は彼女の暗く沈んだ顔を一目見た途端、
『ああ、この方、もしかしたら、、』と一抹の不安を感じたのですが、およそ10日ぶりのお客様ということもあり、お泊めしたのです。
そしたら翌朝朝食をお出ししようと入口の襖を開けると、
いきなり宙に浮いた女の人の背中が視界に入ってきて、、」
そこまで言い藤野は口をつぐむと俯いた。
その後は男性と入れ替わりに紺の絣の着物姿をし日本髪を結った年配の女性が現れると、正座し畳に両手を付いてから「ようこそお越しくださいました。女将の志野と申します」と丁寧に挨拶をした後、大浴場と露天風呂の場所と利用出来る時間を説明する。
それから彼女はこう言った。
まさかの幽霊さんは殺されたって事ですか。ほんと、人間って怖いものですね。