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不思議体験

ねこじろうさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

古ぼけた赤のセダン
長編 2024/07/17 14:35 6,085view
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面倒くさかったから俺は車を減速させ、左に寄せていく。

すると後ろの車は反対車線に侵入して、俺の車の真横を通り過ぎだした。
運転席の窓を開けているのか、懐メロソングがちょっとうるさいくらいに鳴り響いている。

改めて見るとそれは昭和の昔の映画に出てくような赤の角ばった箱形のセダンだ。
かなり年季が入っているようで、車体にはあちこち汚れや傷がある。

─すげえ、今時こんな車乗ってる人間がいるのかよ?

変に感心しながらふと後部座席を見ると、数人の子供が身を寄せ合うようにしてウインドウからこちらをじっと見ている。

二人や三人とかではなく、四、五人はいると思う。

皆、同じ学校用の体操着を着ている。

ウインドウいっぱいにところ狭しと並ぶ顔は皆一様に何か悲しげで、どこか物言いたげだ。
というか数人は必死に口を動かし何かを訴えているようにも見える。

子供たちは通り過ぎる間ずっと、俺の方を乞うような瞳で見続けていた。

やがてそのセダンは俺の車の前方に出ると、すぐ先のカーブを左折して姿が見えなくなった。
同時に、あの騒々しい音楽も聴こえなくなる。

それから俺も左に大きくハンドルを切った。

この先はひたすら下りの直線道だ。

しばらく真っ直ぐ走り続けて、ようやく次の交差点の信号が見えてきた時ふと思った。

─ところで、
あの赤のセダン、いったいどこに行ったんだ?

セダンはさっき俺の車を追い越した後すぐに左折すると、この直線道を走りだしたはずだ。

そして次の交差点までにかかった時間は約5分。

セダンがどれだけスピードを出そうが、当然俺の前方の視界には捕らえられていたはず。

途中は左手に岩肌が迫り、道路を挟み右手にはガードレールが隙間なく続いていて、曲がるところなど一ヶ所もなかった。

路肩らしきところも、、、

途端にぞくりと背中を冷たいものが突き抜けた。

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