娘の描く絵
投稿者:八尺マン (49)
俺は大きな声を上げた
「なっ!!」
驚いたのは相手も同じようだった
持っていたバットを落とし、そのまま逃げっていった
な・・なんなんだ!? 今のは!?
・・・まさか通り魔?
俺はその場で警察に連絡した
そして、このまま迂闊に家に戻るのも危ないと思って、コンビニに逃げ込んだ
少しして警察から連絡があった
無事、その男は確保できたとのことだった
何日かして、その男のことがわかった
そいつはこれまで何人もの人を道ばたでバットで殴って、財布とかを奪っていく悪質な強盗だった
俺は狙われたわけだが、こっそり近づいたはずなのに突然振り返ってきたので驚いてしまったようだ
まさか・・・娘の絵にあった黒い影はこれを暗示していたのか
俺は娘に絵のことを聞いてみたが、絵を描いたことはあまり覚えていないという
「い・・いや、結構、沢山パパのこと描いていたじゃないか?」
「パパの絵、そんなに描いてないよ?」
そんな馬鹿なと俺は娘がこれまで描いた絵をしまっていた棚から取り出してみたが、沢山あったはずの俺と黒い影の絵が一枚もなかった
娘の描く絵はすべて取っているはずなのに
そういえば、あの黒い影の絵を描いている時の娘はなんだか変だった
他の絵を描く時は特に集中して描くというわけではなく、途中で飲み物を取りに行ったり、
途中でスマホをいじったりというカンジだったが、俺と黒い影の絵を描く時だけは一心不乱にずっと絵を描いていた
そして、「それを口にすることはできないだって」という娘の言葉
俺に危険が迫っていることを感じた娘の中の何かが、娘の身体を借りてあの絵を描いたのだろうか
それから娘があの黒い影を描くことはなくなった
それどころか娘は絵を描くことそのものに飽きてしまったらしく、せっかく買ったクレヨンの箱は埃が被っている
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