娘の描く絵

俺は怖くなってきた
娘は何か変なものに影響されてしまっているんじゃないだろうか

「それを口にすることはできないだって」
いったい誰がそんなことを娘に言ったんだ？

お友達のお母さんとかが変な新興宗教でもはまっていて、変なことを吹き込まれたんだろうか

俺は妻に相談した

妻は幼稚園の子供たちのママさん何人かとよくランチに行っている
変な人がいれば噂になっているはずだ

だが、妻はそういった人はいないと答えた

「みんな普通の人たちよ。そんな変な宗教やっているって話聞いたことない」

なら、なんなんだ？

この黒い影はいったい・・

俺は鏡の前に立った
当り前だが、俺の右後ろに黒の影はない

だが、娘の描く絵には必ず黒い影がある

そして、今回、俺を浸食するまでになった

娘には何か見えているのだろうか
俺には見えていないだけで、今も？

俺はそれ以来、右斜め後ろが気になるようになってしまった
何か音がする度に、後ろに黒い影があるんじゃないかって気になってしまうのだ

これは良くない状況だ
気が休まらない

どうにか原因の特定ができたりしないだろうか

そんなことを考えていた、ある日の夜だった

その日は仕事が残業で帰りが遅くなってしまった

人通りの少ない道を一人歩いていた

そんな時、何か後ろで変な気配がしたような気がした

いつもなら気にしない程度のちょっとした違和感

だが、ここ最近の娘の絵のこともあって、俺は違和感を無視することはできなかった
俺は勢いよく右後ろを振り返った

そこには、マスクをして帽子を深くかぶった男がいた
そして、その手にはバットが握られていて、高く振り上げられていた

「うわっ！！」