動く屍々 2編
投稿者:ゼン (4)
食う物なら他に沢山あるだろうに共食いとは。おぞましい畜生め。
Hさんは心の中でごちると、銃の狙いを猪に定めた。大きな猪は食うのに必死でこちらに気づかない。Hさんは引金に指をかけ撃った。
銃声とともに走り出す猪。
手応えはあった。動物は例え致命傷を負ってもしばらくは動く場合も多い。
Hさんは立ち上がると、いつもはすぐにとび出して獲物を追跡する猟犬がひどく怯えて動かないことに気づいた。
仕方なくHさんが追跡を始めると猟犬はHさんの側を離れようせず怯えながらHさんについてきた。こんな猟犬の様子は初めてだった。
そのまま食われていた猪まで行ってみると腹は裂かれ内臓はほとんどなくなっており、一目で死んでいるとわかる状態だった。
Hさんはとりあえずそのまま撃った猪の追跡をすることにすると、百メートルほど先で死んでいる猪を発見した。大きさからいって先程撃った猪だろう。
しかしHさんがその猪に近づいてみると強烈な腐臭が鼻をついた。
その猪は完全に腐っていた。肉はぐずぐずで虫が湧き、所々骨が見え、片目は飛び出していた。
こんな状態で走れる訳ねぇ、別の猪か?
しかし先程の場所からここまでの足跡、血痕、草木の跡からして間違いないはずだ。
Hさんは腐臭に耐えながら猪の死骸を観察してみると銃槍を発見した。
やっぱり撃ったのはコイツだ!
確信と同時に恐怖がわいてきたHさんは少し離れた場所で怯え切っていた猟犬を連れてそのまま引き返すことにした。
そして先ほどの場所まで引き返してきたときHさんは食われていた猪の死骸がないことに気づいた。
どうなってんだ!腹ワタ食われて死んでたんだぞ!動けるはずねぇ!
そこには血痕と猪の毛しか残ってなかったが先程までしなかった腐臭が微かに漂っていた。
Hさんは急いで山を降ると当時知り合いだった祖父の家まで行き、ありったけの塩を頭から被って怯えながら曽祖父に語ったという。
それからしばらくの間、祖父の集落では山に入ることは禁じられた。
喰らった相手に移っていって そこらを渡り歩いてるんかな?
さっきまで生きてたはずの生き物が 動かなくなったと思ってよく見たら腐った死体だった って怪異はいろいろあるけど そういう類いか?
この頃はよく山から獣が降りて来よるから いつかは町中でも見ることがあるかもしらんな。
((((;゜Д゜)))え、こわ…