動く屍々 2編
投稿者:ゼン (4)
怪談を収集していると全く違う場所、全く違う時代で似た話しを聞くことがある。
Tさんから聞いた話し。
登山が趣味のTさんは休みを利用して近くの山に日帰りでハイキングすることにした。
目的の山に着き、登山道に入りしばらく歩くと分かれ道にさしかかった。片方の道は頂上への道。片方は沢に出る道だ。Tさんはこの山は何度も登ったことがあるが沢には行ったことがなかった。
たまには登らず沢に行くか。
と沢に行く道に入った。道はゆるやかに下っており、道の山側は壁に近いほどの急な斜面。反対の谷側も急な斜面で下っておりその下からはチョロチョロと小川が流れる音が聞こえる。
1時間ほど歩くと大きな沢に出た。そこでTさんは昼食と休憩をしっかり取りしばらく自然を楽しんだ。
ほどなくして帰宅しようと来た道を歩いている時だった。強烈な腐臭を感じ、目をやると道の先の真ん中に大きな猪の死骸がある。
なんだこれ…来たときにはこんな物なかったのに。
見てみると猪の死骸は完全に腐乱しており、全身に虫が湧き所々骨が見えていた。
せっかくのいい気分が台無しだと思いつつ、死骸を避けてしばらく帰り道を進んでいるとふと疑問がよぎる。
あの死骸は何であそこに?
あの腐乱具合からして死んで相当経っている。来るときにはなかった。山側の斜面から落ちてきたのか?いや、そんな形跡はなかった。
まさか…
死骸が自分で歩いてきた?
とそこまで考えたときだった。自分の背後から強烈な腐臭と気配がした。
Tさんの頭の中に嫌なイメージが浮かぶ。
先程の猪の死骸が起き上がり自分の後をつけている。
そんなはずはない!
嫌なイメージを振り払うように歩みを早めるも背後の腐臭と気配は離れず恐怖で振り返ることもできない。
きっと風向きが変わってさっきの場所から腐臭がこちらに流れてきているだけだ!
と自分にいい聞かせながら半ば駆け足でやっと分かれ道まで戻ったとき、あれほどしていた背後の腐臭は消えていた。
Tさんはそれ以来その山には入っていない。
似た話をもう一つ
自分の祖父が子供の頃にHさんから聞いた話し。
Hさんは祖父の親、つまり自分の曽祖父と仲のいい猟師である。ある秋の暮れ、Hさんは猪を撃ちに猟犬と共に山に入った。
しばらくすると遠くに猪を発見した。その猪は必死に何かを食べていた。
風の向きに気をつけながら射程までゆっくりと近づいてみるとその猪が何を食べているのかわかった。
それは同じ猪だった。大きな猪が一回り小さい猪を夢中で食べている。食われている猪はすでに絶命しているのかピクリとも動かない。
喰らった相手に移っていって そこらを渡り歩いてるんかな?
さっきまで生きてたはずの生き物が 動かなくなったと思ってよく見たら腐った死体だった って怪異はいろいろあるけど そういう類いか?
この頃はよく山から獣が降りて来よるから いつかは町中でも見ることがあるかもしらんな。
((((;゜Д゜)))え、こわ…