元実話系雑誌ライターのボツネタ供養
投稿者:とくのしん (65)
志賀崎が絶叫に近い悲鳴を上げました。驚いた後輩二人が志賀崎を見ると、志賀崎が腹部を抑えて悶絶していました。
後輩Aが車内のルームランプを点けると、女性が笑いながらナイフを手に持ち志賀崎を刺していたのです。馬乗りになった志賀崎を下から何度も何度もナイフで突き刺すと、たまらず志賀崎は車外へと飛び出しました。もう一人の後輩が女性を取り押さえようとしましたが、女性はすかさずナイフで後輩の首元を一突きしました。女性がナイフを引き抜くと刺された後輩の首元から噴水のような血が流れました。後輩は噴き出す血を両手で抑えながら、助手席側のドアから車外に逃げました。
女性は運転席の後輩Aにも襲い掛かり、ナイフを防ごうと手を出したときに右手の人差し指と中指を切り落されました。さらにAは右目を切りつけられたそうで、その瞬間に右目の視界が真っ暗になったといいます。そして痛みというより熱さのような刺激が襲ってきたそうで、Aは痛みに堪えながら、何とか右手でドアを開け車外へと脱出しました。女性は終始奇声をあげながら車から降りると、のたうちまわる志賀崎に何度も何度もナイフを突きたてました。絶命したのか志賀崎はぴくりとも動かなくなりました。
Aは志賀崎が動かなくなったのを見て、その場から逃げようと走り出しましたが、ケラケラ笑いながら追いかけてくる女性に背中を刺され、女性ともみ合った結果、ガードレールから崖下へ落ちてしまいました。
崖下に落ちた後輩は翌日早朝に意識を取り戻しました。かなり下まで滑落していたそうですが、運よく足は骨折しておらず、自力で這い上がれたそうです。昨日の現場に戻ると、志賀崎ともう一人の後輩の遺体はなく、志賀崎の車だけが残っていました。現場に大量の血痕を残して。
その後輩は志賀崎の車をそのまま運転して一人戻ったといいます。自分たちがこれまでしてきたことを考えると警察に言う訳にもいかず、また昨夜の出来事を話せば自分が疑われるのでは?という恐怖から警察には言うことはできなかったといいます。後輩は右目と右手の指2本を失いましたが、幸い命に別状はありませんでした。
傷が癒えた頃、後輩は車に残っていたドライブレコーダーの映像を確認したそうです。映像には、例の女性の車が道端に止まっているところが映っていましたが、そこの部分を見て後輩は絶句しました。
あの日、3人が見た女性は1人だったはずですが、映像には女性の車に数人の女が乗っていたというのです。そして、志賀崎の車が近付くと一斉にこちらに視線を移したと言います。
その表情は全員が不気味な笑顔だったとのこと。
車を停めたあと女性を言葉巧みに車に乗せたあと、志賀崎が女性を襲うわけですが、どこからともなく
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
という無数女性の声が入っていたそうです。そうして悲鳴が車内に響き渡り、志賀崎が車の外へと逃げていくと、無数の女性があちらこちらからすーっと現れ、志賀崎がのたうち回る姿を指さして笑っていた様子が映っていました。
また、Aが崖下に落ちていく様も録画されていましたが、その様子を無数の女性たちが見ていたそうです。Aが落ちたあと、死んだであろう志賀崎ともう一人の後輩を女性達がずるずると引きずりながら山へと消えていく一部始終が映像に収められていました。
にわかには信じがたいその話を聞いて、A自身が薬物の影響から幻覚でも見たのかと疑いました。私が訝しんで取材をしていると、Aは右手の包帯と右目の眼帯を取り、さらには背中の傷跡を見せてきました。話の通り右目には縦に切り傷が、右手の人差し指と中指が欠損、背中には一突き二突きされた刺し傷が痛々しく残っておりました。
私はAからその映像の入ったSDカードを譲りうける約束をしました。Aもあんな不気味な映像は持っていたくないと渡すことを了承していたのです。
その後、受け渡しの日にAは約束の場所には現れませんでした。彼は自宅近くの河川敷で焼身自殺したそうです。理由はわかりません。組に志賀崎を殺したと疑われたのか、それとも死んだ責任を取らされたのか。志賀崎は組に対してはかなり忠誠心があったそうで、毎月の上納金額もかなりあったそうですから、組とすれば志賀崎の死は痛手であったことは想像に難くない。一人生き残ったAがその責を取らされたと私は見ています。
そしてAが死んだことで例のSDカードは終ぞ見つかることはありませんでした。Aと親交のあった人間にも尋ね廻りましたが、逆にそれが私の身の危険に繋がることになり、最終的にSDカードを断念せざるを得ませんでした。
これが私が実際に取材した話です。ボツになった理由を当時の編集長に問いただしましたが、理由は最後まで教えてもらえませんでした。ただ、想像するに物証となるSDカードを入手できなかったこと、それと志賀崎関連で私の身に危険が迫ったことで、恐らく記事の内容を事前に察知した組が圧力をかけてきたのではないかと思っています。
最初に申し上げた通り、自分のなかでこれをボツとして闇に葬るのも忍びないことから、供養として投稿させていただいた次第です。最後までお読みいただきましてありがとうございました。
これはスカッとする話
杉作J太郎さんが好きそうな話ですね
因果応報
いい話だなあ