いち、夏のイベント
全然関係ないのに、話し合いに巻き込まれた朔羅は、ため息を吐いて詠里を見る。
「夏イベントの話から何で肝試しにトんでんだ」
「イベントで肝試しをやるからよ」
「は?アトラクションじゃなくて?」
「アトラクションにはお化け屋敷があるでしょ」
「それと別に作るんじゃねぇの?」
「作るわけないでしょ。どんだけ金かかると思ってんの。イベントよ!イベント!日が沈んでからやるイベントなんだけど、まず最初に警報を園内に放送するの」
「迷惑極まりねぇし、客もビックリすんだろうが!」
「ちゃんとパンフにイベントの注意事項書くわよ。勿論警報のこともね。それで、警報を鳴らしてから10分後、お化けに変装したバイターを園内で徘徊してもらうの。あ、驚かすのは有りだけど、触れたりするのは無しでね。場所は食事所とショッピングロードと入り口付近とトイレを除いた園内全体」
詠里の説明を聞いた朔羅は数秒考えた。
「それ、肝試しか?」
「肝試しではなく、ハロウィン祭りに近いと思います。トリックオアトリートと言葉を付ければ完璧でございますね」
「それは言えてるな」
火夜の言葉に朔羅は同意する。
それを聞いた政宗は顔をしかめた。
「夏料理をハロウィン料理に変更しないと…」
「いや、夏料理でいいのよ政宗。マジで捉えてどうすんの。正直言えばあたしもそう思ったわ。だ、か、ら!」
ニコッと笑った詠里に臾鎌を除いた社員は嫌な予感を感じた。
ちなみに臾鎌は失踪中。
園内にいると思われるが、行方知れずである。
詠里は一枚の書類を突き出し、高らかに言う。
「まずはあたし達が肝試しするわよ!」
「「何でだぁっっっ!!」」
人間二人が勢いよく突っ込んだ。
「怖いわっ!」
「そう言う問題じゃねぇんだよバカやろう!」
ゴンッ!
朔羅は麻己音の頭を思い切り殴った。
そして詠里に向き直る。
「何で実際に肝試しする必要があんだよ!肝試しなんて、幽霊が出るか分からない所を歩き回れるか肝を試すから肝試しって言うんだろうが!お前のそのイベントは霊を歩き回らせるから肝試しっぽくねぇだけで、園内で雰囲気だけ作って決まった場所に霊を配置させとけば、後は客がそこ歩けるか肝試せば良いだけだろーがっ!つーか、お前怨霊じゃねぇかぁ!肝試す側!」
「違うわよ!そんなくだらない事しないわ!肝試すのは浮遊霊とかで、人を呪い殺すことが怨霊よ!」
「知るかっ!どーでもいいし、性質悪ぃ!」
「つーか、その書類、依頼書じゃねぇか。肝試しなんて口実だろ。本音は?」
今まで我関せずだった黒が突然口を開いた。
それに全員驚く。
「どうしたの黒。ゲーム最中のあんたが喋るなんて」
「エンドロールはトばせねぇんだよ」
「納得だわ。安心した」
「すんげぇ腹立つんだけど。言いてぇこと分かっても腹立つ」
「それでもあたしには頭が上がらない現実でしょ?肝試しに行く予定の廃墟なんだけど、何か異常に霊が出現してるみたいでね。その調査を頼まれたのよ。ついでにイベントのヒントにでもなったらと思って、肝試しでもやろうと」
「怨霊が肝試しぃ?聞いたことねぇよ。あ、終わった。取り敢えず次は別のゲームでもやるか」
黒は目の前に置いてある、二段式のジュエリーボックスを開き、名前順に並んだゲームソフトを見ながら悩む。
「おい、黒。その箱おかしくねぇ?」
隣にいた朔羅。
偶々黒のジュエリーボックスが目に入り、微妙に違和感を感じたので、直球で本人に聞いた。
「あ?何言ってんだてめぇ」
「それ俗に言うジュエリーボックスだろ。全然ジュエリー入れる仕様になってねぇじゃねぇか。何でゲームソフトが一枚ずつ並んで仕舞えるようになってんだ」
「これは俺がジュエリーボックスを改造してソフトボックスに進化させたんだ。何か文句あんのか」
「進化っていうのかソレ!?ってか、お前、ホント自分の趣味にはトコトン妥協なしだな!」
「ウチの子に愛情あるのは当たり前だろうが」
「子じゃねぇだろ!物だろ!」
「それで、肝試しなんだけど、今日の深夜0時にこの廃墟前に集合ね」
「話進めんな!勝手に決めんな!」
二人のやり取りを無視して話を進めた詠里に、朔羅は切れる。
「何よ。文句多いわね」
「ったりめぇだろう!そのまま話進めさせたら俺も肝試し参加ルートになるだろ!ふざけんな!俺はてめぇらの仲間でも、此処の社員でもねぇんだよ!何度言わせんだ!毎回巻き込みやがって!」
「嫌なら断っていいわよ。あんたの実家に呪いかけるだけだから」
「死ねっ!」
朔羅はガツンッ!と机を殴る。
いつもの事なので一人を除いては、全然気にしない。
ただ、ジャックだけは涙目でオロオロしていた。
これもいつもの事なので、皆気にしない。
「もう死んでるし。でも行った方が良いんじゃない?」
「あ?」
朔羅は詠里を睨む。
「この廃墟、肝試しするにはうってつけって事で、人間達がよく入るのよ」
「だからどうした」
「さっきも言ったけど、異常に霊が出現してるの。どんな異常なのか分からないわ。ただ、ほったらかしにしたら、死人が出る確率は高いと思うけど?」
「…」
「知ってて何もしないのは、見殺しと同じよ。獣医を目指してるって言っても、医学に変わりはないでしょ?それなのに、いいの?見殺しにしても」
怖かったです。
句読点が多すぎて少し読みづらい。
ちょっと意味がわかりづらい
忘れられない修学旅行に、なりましたね。
ちょっとメンヘラっぽい文章がいいね