アリスの鳥籠

ねぇ、アリス症候群って知ってる？

『不思議の国のアリス』のお話の中で、主人公のアリスが、キノコや不思議な飲み物のせいで、身体が大きくなったり小さくなったりするんだけど、そこから名前がついた病気。

自分の身体や周りのものが、大きくなったり、小さくなったりするように感じるの。

お皿の中のスープが、プールみたいに見えたり。
手にしたハサミの刃が、巨大なギロチンみたく見えたり。

大きいものは小さく。
小さいものは大きく。

まるで、不思議の国に迷いこんだみたい。

私は日本人だし、アリスなんてお洒落な感じの名前でもないけど、こんな不思議な病気にかかっちゃって、毎日ホントに大変。

もう死にたくなっちゃった。

でもね、最近とっても素敵なことがあったの。

同じクラスの山崎君。
イケメンで、野球部のエースで、勉強もできて優しくて。
おまけに背も高くって、クラスの女子みんなが憧れる男の子。

彼、私よりずっと背が高いから。

私よりずっと「大きい」から。

だから、「小さく」なっちゃって。

だから、捕まえちゃったんだ。

捕まえて、うちで飼ってるインコの鳥籠に、こっそり入れちゃったんだ。
インコは邪魔だから逃がしちゃった。

これで彼は私だけのもの。

藤井さんにも高野さんにも田上さんにも仲田さんにも平田さんにも岡さんにも吉田さんにも広瀬さんにも渡さない。

あなたは、私だけのもの。

ねぇ山崎君、暴れないで。
ちゃんとごはんあげてるでしょう？
お水も毎日変えてるし、トイレもキレイにしているよ？

ねぇお願いだから、山崎くん。
あんまり言うこと聞かないと、

タベチャウヨ？