点検口
投稿者:埜威 (8)
それが…いつからだろう、頭に浮かぶ女の子の顔が少しづつだが口角があがってきた。目は相変わらず糸目で目玉が見えないのにギョロっとした視線を感じるのだが、なんだかそれも少し笑って感じる。それを見てないのに脳裏のイメージはハッキリと変化していた
毎回徐々にその「笑み」が大きくなっていたと思う。不快感しかない意地悪な嗤い
そう感じれば感じるほど点検口を見る事が出来なくなった
夏になりエアコンの故障で社内の一部がサウナ状態になった。おかげで私も呑気に点検口を気にしてる余裕が無かったのだが。ハンディファン片手に暑さに気が緩んでつい点検口を見上げてしまった
にちゃぁぁ…
という音が聞こえそうな程、そこにいた女の子は口角が異常に上っていて口の隙間は赤黒く粘膜がテラテラしていた。こちらの不快感を楽しんでいる満面の嗤い顔
おぞましい表情に暑さを忘れ私は目をギュッと瞑って走って点検口の下を通り過ぎた
これ以来私は彼女を見ていない
その女の子は現在見る事が出来ない。見えない、ではなくて見る事が出来なくなった
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手元にある新聞記事
画像を載せられないので抜粋し文字で起こす
■■■で火災
△月△日 午前△時△分ごろ
〇〇市〇〇町の■■■で「天井裏が燃えている」と通報かあった。市消防局によると天井裏の約〇〇〇〇平方メートルを焼いた。けが人はいなかった。出火原因を調べている
これが見る事が出来なくなった理由である。その後改装して点検口の位置も変わり、屋上も綺麗に整備された。消火活動で屋上に登れずハシゴ車がとても高い所まで伸びていたのを見て、やっぱり屋上に誰かが登るのは不可能なんだと言うのは蛇足かもしれない
前記した通り私は途中の様子をTwitterで話したり、点検口の写真もアップしていた。その時思いもしなかった突然の終わり
火災の原因が…とは思わないが、彼女が今どうしているかな?程度には思い出す
職場の気味が悪い所ってあるけど天井は怖すぎるなぁ