【short_76】ゲームセンター
投稿者:kana (210)
仕事でとある地方都市に出張した。
その晩は寂しい商店街の居酒屋で食事をし、ビジネスホテルに戻ろうとしたところで、
ゲームセンターがあるのを発見した。イマドキ場末のゲームセンターである。
つい、懐かしさもあって入ってみる。
部屋の中が暗い。蛍光色の手作り感満載な飾り付けが、ブラックライトに反応して
暗い中で浮いている。そこに数人の客がいたが、彼ら全員真っ白な服を着ており、それがまたブラックライトに反射して紫色に輝いていた。かく言うボクも白いワイシャツがやはり紫に輝いている。人の事は言えないか・・・。
さて、どんなゲームがあるのかと物色してみると、いろいろなジャンルが置かれているが、どれも見たことのない、昔のファミコンみたいな貧弱なグラフィックのゲームばかりで逆に驚いた。というか、どれも有名ゲームのパクリっぽい感じだ。
「お兄さん、この店はじめて?見ない顔だね」突然他の客から話し掛けられた。
「えぇ、ちょっと出張で。明日東京に帰る予定です」
「へぇ東京の人か~。・・・オイ、この人東京から来たんだってよ」他の客たちに呼びかけるとみんな一斉にこっちを見てワラワラと集まって来た。
なんだか最初はちょっと不気味に思ったが、ゲームで対戦したりして少しずつ打ち解けていった。ショボイ格闘ゲームで対戦し、ボクが勝つと、みんな口々に「カルマ! カルマ!」と叫んで褒めたたえてくれる。・・・いや、褒めてくれているような雰囲気なのでそうだと思うのだが、なんでそれが「カルマ」なのか皆目見当もつかず微妙な達成感だ。
その後、彼らの勧めで「占い」のゲームをやってみた。・・・が、スタートした途端、個人情報の入力画面が出てくる。血液型からフルネーム、電話番号に住所まで・・・どうもおかしい。個人情報を抜かれているようで怖かったので、とっさに偽名と会社の住所を入れた。
「そこ、ちゃんと本当の名前入れなきゃダメだからね~」何かを察してか、そんな風に言ってくるが、かまわず偽名をいれた。
占いのゲームでは結局「あなたは素晴らしい人生をあゆむ」とか「世界を救う力を持っている」などオーバーすぎる誉め言葉が並び、逆に気味悪くなった。そして再びみんなが口をそろえて「カルマ! カルマ!」である。この地方独特の挨拶か何かなのだろうか。
そしてさらに、彼らはこの奥にVIP専用のゲーム室があるから行ってみないかと誘ってきた。
・・・なんとも怪しい。ここはなんとか断ろうと思っていたら、ちょうどよく彼女から電話がかかってきた。これを会社から掛かって来た仕事の用件だということにして、ここから逃げ出す口実に利用しよう。「ハイ、ハイ、例の件ですね?ホテルに戻ったらすぐ見積書ををお送りしますので、いましばらくお待ちください」・・・彼女はメン食らっていたが、事情を察してか話を合わせてくれた。あとでフォローの電話を入れておこう。
「いや申し訳ない。仕事入っちゃって、もうホテルに戻らないと。ボクはこの辺でおいとまさせてもらいます」そう言って、不満げな顔の彼らを残し、ボクはそそくさと逃げだした。
(それにしてもなんとも怪しい店だったな。アイツら、まだボクのことを見てる・・・)
・・・・・・
・・・私の彼が失踪してもう1か月。なんの音沙汰もありません。彼との最後の電話では、明らかにおかしな言動をしていました。バックからゲーム音のようなものがしている所で、まるで私を仕事上の相手か何かのように振舞って・・・。彼、あの時いったいどこで何をしていたのでしょう・・・。なにかの事件に巻き込まれたのでしょうか・・・彼が無事、戻ってきてくれることを毎日祈っています・・・。
連れて行かれてしまったのでしょうか(@_@。
ホラーって殺す訳にはいかないから難しいよな。
行方不明とかでも「じゃあ何で知ってるの?」って話になってしまうし。