【short_69】13階の秘密

同じ小学校へ通うS君から妙な話を聞いた。

「あのさ、ウチのマンション１２階建てなのに、１３階があるの見つけちゃった!!」

なんだそれ?と思ったボクは、さっそくS君のマンションへ遊びに行った。
なんとなく暗い感じの古いマンション。

「いいか、見てろよ」そう言うS君にくっついて一緒にエレベーターに乗る。
S君は最上階の１２階のボタンを押す。どうやらエレベーターは１２階までで
１３階のボタンはないようだ。

ボクらは一度１２階へ降りた。
いたって普通。だが階段が上に伸びている。

「なんだ、この階段を登ればいいのか?」そう聞くと、S君は首を振り
「違うんだなコレが。この階段は屋上に繋がってるんだよ。いつもは鍵が閉まってるから
屋上には出れないけどね」・・・と、言う。

「こっちこっち」S君は手招きして再びエレベーターへ乗れと誘う。
そして「こうするんだよ」と、１２階と1階のボタンを同時に押した。合わせて1３だ。

エレベーターは動き出し、ひとつ上の階に停まった。13階である。

「実はエレベーターでイタズラしてて発見したんだ~」
イタズラ好きなS君らしいなと思った。

13階はシーンとしており、真っ暗。事務所らしき部屋はあるが、中は覗けないし、人がいるのかどうかもわからなかった。なんとも不思議な、ちょっとした冒険をした気分になった。

それからしばらくしてS君は行方不明となり、警察によって捜索がなされた。
ボクはS君に教えられた13階の行き方を警察に教えたが、エレベーターは13階へは行かず、12階か1階かのどちらかへ向かった。・・・おかしい・・・。

3日後、異臭がするということで調べた屋上の貯水タンクの中から
S君は遺体となって発見された。