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妖怪・風習・伝奇

やうくいさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

やまびこ様
短編 2021/03/12 12:23 6,729view
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ある村に六兵衛という男がおりました。
六兵衛は腕のいい猟師で、時々山に行っては鹿や兎を狩り、生計を立てていました。
いつものように山へ狩りに行ったある日のこと、六兵衛は今まで見たことがない光景に出くわしました。
鹿三体が前脚を曲げ、同じ方角に頭を垂れるようにしてじっとしていたのです。
よく見ると、鹿の足元の方には兎も何体かうずくまっているようです。
今日はついてるな。
そう思った六兵衛は一発猟銃を撃ちました。
弾は鹿の一体の首元に見事命中し、仕留めることができました。
しかし、おかしなことに他の鹿や兎はぴくりとも動こうとしません。
なにがどうなってるんだ。
困惑しながらも、六兵衛はもう一体の鹿に猟銃を撃ちました。
またもや首に命中し、倒れる鹿。
それでも最後の一体の鹿は逃げません。

これ以上仕留めても持ち帰れないな。
そう思った六兵衛は猟銃を背負い、仕留めた鹿を取りに向かいました。
六兵衛が近づくと鹿や兎はこちらをじっと見つめてきます。
気味の悪い光景に六兵衛はゾッとしましたが、せっかく仕留めた獲物を無駄にはしたくありませんので、少し離れた所で解体することにしました。

しばらく経ち、ある程度解体し終えた六兵衛は、鹿を背負い立ち上がりました。
なんとなく先程の場所を見ると、未だに鹿と兎はじっとしています。
なんなんだ、一体。
こんな場所からはとっとと立ち去るため、六兵衛は山を下り始めました。
すると突然、山全体がぶるぶると震えだしたのです。
こんな事は初めてだ。
六兵衛がどうしたらいいか分からず、うずくまって震えていると、突然誰かに話しかけられました。
「おーーい」
低い声が、遠くから響いてきます。

「なんじゃ!」
六兵衛は負けじと言い返しました。
「おーーい、六兵衛よ。お前はしてはならんことをしてしまった。」
「なんのことじゃ!」
「やまびこ様が通るのを待っていたものたちを、お前は殺してしまった。」
やまびこ様…?
六兵衛は、先程の光景を思い出しました。
あの鹿はそんな理由でしゃがんでいたのか。
「だからお前を殺そうかと思ったが、償うなら赦してやらんこともない。」
「なにをしたらいい!」
「殺した者の数、お前の村の人間を殺せ。」
「ふざけるな!」
六兵衛は声のする方に猟銃を撃ちました。
それっきり声は聞こえなくなりました。

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関連タグ: #声#子供#山
コメント(5)
  • 面白い

    2021/03/12/13:24
  • 日本昔話風に脳内再生して読んじゃいました

    2021/03/12/14:16
  • 面白いけど誰がこの話を伝えたんだ。

    2021/03/13/06:39
  • すごく好きです

    2021/03/16/01:22
  • こういう雰囲気好きです。

    2023/07/04/22:07

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