赤い水
投稿者:太山みせる (37)
戦争で、空からたくさんの爆弾が降ってきた
火がついたまま降ってきたので、まるで火の雨のようだった
それが木造の密集した家に当たって、一面、真っ赤な火の海になった
あまりに多くの人が死んだため、対応に追いつかず、一時的に遺体は広い小学校の校庭に並べられた
※
終戦から20年ほど経った頃
かつて死体が並べられた小学校で、放課後、数人の子供たちが水を飲もうとした
ところが水道の蛇口を捻ると、出てきたのは赤い水だった
皆、驚いて狼狽える中、一人の少女は水を飲んでしまう
他の子たちは驚いた
真っ赤な水だ!きっと七不思議の『赤い水』だよ!こんなの飲んじゃダメだ!
慌てて飲むのを止めさせようとする
けれど少女は狂ったように水を飲み続けた
赤い水は勢いよく跳ね返り、少女の白いブラウスを真っ赤に染める
ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ
痛くないのかと思うほど、強く喉を鳴らして飲み続ける
足元まで赤い水は垂れて、血が滴っているようにも見えた
飲む勢いは止まらない
途方に暮れた子供たちは教員を呼びに行く
再び戻った時、少女は真っ赤な水溜りの中で倒れていた
病院に搬送されるも、意識は戻らぬまま、3日後に命を落とした
死因は、水に含まれた毒素によるものだとされた
水は赤くなっていたのに、何故に飲んだのか?
この学校には、『赤い水』という都市伝説がある
その内容は、戦争中亡くなった方の流した血が、時々、水道から出てくるというものだ
生徒たちは噂し合った
少女は、戦争で亡くなった亡霊たちに殺されたのだと
※
少女は暗闇の中にいた
真っ暗なのに、何故かどこにもぶつからず、歩くことができる
地面以外、何もないからだ
誰もいない…ここがどこかも分からない…
どうしたら良いのか分からないから、とにかく誰かに会って、相談しようと考えた
かなり歩いた時に、遠方にぼうっとした光を見つけた
何だろう?
近づくに連れて、それが何だか分かった
宙に浮いている、人間の後頭部だった
(頭だけの幽霊だ!)
少女は怖かったが、幽霊でも誰かに会えたのが嬉しかった
「あの…」
話しかけると、頭部はぐるりとこちらに向いた
「私、帰りたいのですが、どうしたら良いですか?」
首だけの幽霊に尋ねてみた
幽霊は血走った目で少女を睨むと、
「俺はたくさんの人を殺した。主に貧乏な若い女たちだ。親が大金持ちだから金の力で黙らせてきたが、ある日、殺した奴らの親族に捕まり俺は殺された。あいつら、寄ってたかって俺に暴行を加え、首を切り落としたんだ。俺は地獄に落ちた」
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