深夜のテレビショッピング【素敵なアンチエイジング】
投稿者:ねこじろう (147)
それは小春日和の月曜日のこと。
都内にあるF北警察署二階の取調室。
うなぎの寝床のような部屋でベテラン刑事の大田と容疑者の女が向かい合い、座っていた。
奥の窓際にあるデスクの前には新人刑事の篠原が座り、もくもくとパソコンのキーボードを叩いている。
「名前と年齢は?」
大田が上目遣いで、正面に座る女に尋ねる。
「楠田チヨと申します。
年は今年の1月で78になりました」
女は俯いたまま答えた。
「は?78歳?
あんた、なめてんのか?」
そう言って大田は濁った目で女を睨み付けると、苛立たしげに白髪混じりの頭を掻いた。
彼のリアクションは至極もっともだろう。
というのは正面に座る楠田という女の顔はどこから見ても老人ではなく、20代の若い女性だからだ。
肩までの艶やかな茶髪に張りのある白い肌をしていて、目鼻立ちのはっきりした美人だ。
ミントグリーンのフェイクレザーのトップスに、ブラウンの柔らかいフレアスカートを合わせている。
ただ体型は少々寸胴ぎみでだらしない感じで、机上に置かれた両手の肌にも張りがなかった。
「本当なんです!
信じてもらえないのでしたら、財布の免許証を見てください」
楠田の言葉を聞いて奥の若い刑事がデスクの上の袋から楠田の財布を取り出し、中から免許証を抜きとると、おもむろに大田に手渡す。
彼は目前で免許証をまじまじと見た後、馬鹿にしたように鼻で笑い「あんたの言う通りこの免許証の人間は78歳だ。
だが写真は明らかに他の人間じゃないか!
あんた『公文書偽造』までやったのか?」と強い口調で言った。
それでも楠田は「でもその写真は私なんです
よく見てください、名前も同じでしょう。
信じてください」と言って真顔で大田の顔を見る。
確かに名前も年齢も一致している。
だが肝心の顔が全く違うのだ。
目の前の楠田はさらさらの茶髪に卵形の顔形、
透き通るような白い肌にくっきりした眉毛、高い鼻、小さな唇の、いわゆる現代的な顔立ちだ
オチが分かりませんでした。ただ同じ商品を使っていたという事でしょうか?でもそれだと別に気の毒ではないし…
顔を若く整形しても、手と首でバレるからね。
そんな商品通販で売ってたとしても買う人いるのかな?