田中くん
投稿者:泥沼 (2)
その後も、田中くんから何度も何度も鬼ごっこに誘われた。
だが、僕はそれを断り続けていた。
そして、気付いたら——彼は転校してしまったのだ。
Aのお通夜から半年が経った頃だったか。
同級生から連絡が入った。
田中くんが見つかったとのお話であった。
あの後も、彼等は必死に探していたらしい。
週末に会うから、お前も来ないかとのお誘いである。
僕は約束場所の居酒屋へと入った。
そこには見慣れた同級生の姿と、好青年が談笑していた。
田中くんだった。
背が低かった彼はググンと伸び、僕よりも高くなっていた。
転校の理由を聞いてみた。
中学三年生の二学期。
田中くんの保護者が経済的に安定したおかげで、彼は親元へと戻ったんだと。何も告げずに消えてしまったのは申し訳なかったと謝罪の弁さえも述べていた。
その後、僕たちは一番気になることを聞いてみた。
「なぁ……やっぱり僕たちのことを恨んでいるのか?」
「……昔は恨んでたかもね。でも、今では全く恨んでないよ」
田中くんはそう言って、女性とのツーショットを見せてくれた。自慢の彼女らしい。一緒に同棲して今が一番幸せだとさ。
謎は解決した。
田中くんは何もしていない。全部Aのホラ話だった。
そう思い、僕たちは酒を笑いながら飲み交わした。
でも、その帰り道に、田中くんが気になることを言ってた。
「もしかしたら、生き霊とかの類なのかもね」と笑いながら。
でも、僕たちは全く笑えなかった。
過去の生き霊が未来の僕たちへ仕返ししている。
それも、夢の中で。
助けを求めることも、警察に被害届を出すこともできない。
ただ、その生き霊が現れたら——僕たちは逃げるしかない。
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