俺の現実
投稿者:EITA (3)
目が覚めると俺は拘束されていた。
何が起こっているのかは自分でも分からない、いや正確には理解できないのかもしれない。
しかし拘束されている以上ただ事ではないのは分かった。拘束されて落ち着いていられる奴はそういないだろう、勿論俺は落ち着くこともできずパニック状態になった。
とにかく叫んだ。「助けてくれ!」「死にたくない!」「ただの悪い夢であってくれ」そう思ったとき
「うるさい!」無我夢中で叫ぶ俺を誰かが止めた。
よく見ると俺の後ろに女がいた。女も俺と同じように拘束されていたが、俺よりもやけに拘束が緩かった。
「男が喚き散らすなんて…ダッサ」俺はむかついたが女の言うとおりだったので黙るしかなかった。
「あんたも捕まったんでしょ」女の一言で現実に引き戻されていく。そうだ俺はここから脱出しなければいけない「あたしの拘束を解いて」女はそう言った。
俺は女の拘束をほどこうとした。しかし見えないためほどくのは厳しかった。俺は力任せに紐をちぎろうとした。手の皮が裂け、爪がはがれた。何とか拘束を解くことができた俺は女に拘束を解いてもらい、ここからの脱出方法を考えた。
女が言うには、ここには大きな扉がありそのカギを探せばいいらしい。俺はよくある漫画の展開を想像した。鍵は見つからず、主人公もろとも殺されてしまうあの展開を…俺は必死になってカギを探そうとした。しかし意外にも鍵は近くに合った。俺は罠だと思ったが本物の鍵で扉も開いた。そして本当に外に出れしまった。
やっぱり何かおかしい、やっぱりこれは罠で最後に俺らをとらえた奴が襲ってくるんだ。しかし最後まで誰にも襲われずに人がいるところまで帰れた。
漫画によくある展開は、現実にはないんだということを俺は再確認した。
数年後、
俺は結婚した。結婚相手はあの日一緒に脱出した女、リサだ。リサとの日々は最高だった。毎日二人で過ごし、どこかへ出かけ、夢のような日々を送った。
そしてなんとリサは子供を授かった。名前はソラのびのびした良い名前だ。これから新しい家族も加わりより一層素晴らし生活が待っている、そう思うだけでワクワクしてきた。
「…きろ…まえ」「おき…お…え」「起きろ!おまえ!」誰かにたたき起こされた。なんだ、俺はいまリサの出産に立ち会っていたはず…!「拘束…されてる」この光景どっかで見た。
「あ、あの日だ」忘れもしないあの日、リサと一緒に脱出した日。俺はパニック状態になった。
とにかく叫んだ。「リサ!」「ソラ!」「ただの悪い夢であってくれ」そう思ったとき
「うるせぇなぁ」無我夢中で叫ぶ俺を誰かが止めた。男が立っていた。白衣に身をまとった不気味な男だ。
「夢からお目覚めかい?」男は突然そう聞いた「夢?」俺は訳が分からなかった。「そう夢、お前が見ていたのはすべて夢だ。妻も子供もお前にはいねぇんだよ」
「は?」
「さっきまでお前は俺らが開発した薬によって寝ていたんだよ。薬の効果は、相手に幸せな夢を見せる。しかも長い長い夢だ」
「う、嘘、嘘だそんなこと!俺は信じないぞ!」
「信じる信じない以前にこれは事実だ、じゃこいつを奥へ運んでくれ」
「おいまて!やめろ!助けて!」
「じゃあな実験体君」
俺は最後に泣きながら言った「俺の現実を返せ」
男は言う「何が現実だ、お前はこれがリアル、現実なんだよ、残念だったな」
毎回なかなか個性的な作品をつくりますね。
最後の「ははは」が好きすぎる。