治験バイト
投稿者:ねこじろう (147)
それは長い夏休みも終わった前月9月の最初の週。
その日の日中俺は大学構内にいた。
学生食堂の長テーブルで昼飯を食べているとFが正面に座り、おもむろに喋りだす。
「実は11月〇日はS美の誕生日なんだ。
付き合いだして初めての誕生日だから奮発して少し良いものをプレゼントしようと思ってるんだけど、お前も知ってる通り俺自分の生活だけで手一杯で貯金もなくてさ、それで短期で金になるバイトを探してみたんだ。そしたらネットのとある情報サイトにこんなバイトの募集があったんだよ」
そこまで言って、Fは自分の携帯を俺の眼前にかざす。
画面のトップには
【実働わずか1日で30万円が稼げる仕事です】
という怪しげなタイトル。
その下方に内容が書かれている。
要約すると、とある場所に行き外資系大手製薬会社の新薬を治験すると、その報酬として30万円をもらえるというものだった。
こんなの怪しいから止めときなよと俺が言うと、あいつ、誰もが知っているアメリカの有名製薬会社の新薬だから絶対大丈夫なはずだとか、
アメリカではもう1年前から既に数百万人の人たちが利用していて何の健康被害もないという実績だとかを、
携帯の画面を見せながらしたり顔で熱心に説明する。
それを聞いているうちに俺もこのバイトなんだか良さげかな?と思い出してしまい、結局一緒にやろうということになった。
それで各々携帯のウェブサイトから個人情報を入力しエントリーすると、すぐに返信のメールが返ってくる。
それからその週の日曜日の指定時間に大学近くの駅ロータリーで2人待っていると、製薬会社のロゴマークのペインティングされた銀色のマイクロバスがやってきた。
乗り込むと既に老若男女数10人が座席に座っている。
運転席横に立った白いTシャツを着た長身の白人男性が明るく自己紹介した後、その日の予定を説明した。
それからアシスタントらしき若い日本人女性が全員にアイマスクを配ると、この日の仕事は製薬会社からの要請で極秘に行われるものだから必ず着用してくださいと言う。それで座っている男女全員はアイマスクを着用した。
そこから俺たちは視界が遮られた状態のまま1時間ほどバスに揺られ、とある場所で降ろされた。
そこで初めてアイマスクを外すことを許可されたんだけど、そこは大学の講義室のような、長机と椅子が整然と並べられた広々とした場所だった。
机の上には等間隔でペットボトルが置かれている。
バスに乗っていた全員がぞろぞろと着席した頃合いに、室内先頭にある演壇に白衣姿の白人男性が現れる。隣には同じく白衣姿の小柄なアジア系の女性が立っていた。
彼はマイクを片手に英語で自分がアメリカ某製薬会社の主任研究員という身分を明かした後、これから治験してもらう新薬の安全性を背後のホワイトボードを使って丁寧に説明しだす。
隣のアジア系の女性が日本語で同時通訳をする。
一通り説明を終えた男性は最後に片言の日本語で
「みなさんはこのすばらしいおくすりをたいけんすることのできるさいしょのひとたちでーす」
と言って満面の笑みを浮かべた。
その後アシスタントらしき白衣の女性が笑顔をふりまきながら、室内にいる一人一人に小さなビニール袋を配り始める。
日本を狙うテロで米国拠点というのが解せませんね
中■や■シアなら、やりそうな感じはしますけど
アメリカを拠点にしたテロ組織がわざわざ日本狙うかな
。:+((*´艸`))+:。